拍手御礼用<白>
□ひとの定義<神田>
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存在
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「ねえ、人間って…いつから人なの?」
「あ?いつからって何だよ」
いまの今まで今日あったことを互いに面白可笑しく報告していたので、
急に方向転換した私に瞬時にはついてこれず困惑している彼。
そんな彼から視線を外し、窓から見える夕日に目を向けた。
「いつから人で、いつまで人なのかなって…」
「どういう意味だ」
「…そのままだよ。人はいつから“ひと”としてみてもらえて、どこまで“ひと”として在れるのか」
不可思議な質問をする私を訝しむも、彼は少し考えた後
さも当たり前の様に答える。「最初からだ」と。
「最初って…?」
「…そりゃあ、腹にいるときからだろ」
「でも倫理上、妊娠三ヶ月くらいまでは死亡届出さなくて良いらしいよ?」
何が言いたいのか分からず返答に困ったらしい彼は、
私の質問を質問で返す。
「…じゃあ人間と猿との違いは?」
「…知能、とか?」
「最近の猿は頭いいらしいぜ?」
あなたよりも?
咄嗟にそんなことを口走りそうになったが言えば間違いなく機嫌を損ねる。
とりあえずどこかで聞いた内容を答えてみた。
「じゃあ火を使えるかどうか…?」
「…………」
一番尤もらしい答えを述べたのにため息しかつかない彼。
違うのだろうか。彼の求める答えとは…
すると居住まいを正し、それでも呆れた態度は変えず答えた。