TOS(+ラタトスク)
□ソバデ
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ジーニアスは小さく笑顔を見せると、左肩のコートをゼロスにかける。
「…しゃあねぇな」
ゼロスも笑顔を見せ、体を寄せる。
暫くの沈黙の後、ゼロスがぽつりと口を開いた。
「……眠れないのか?」
ただ目の前の景色を見つめる、一つの影。
「…うん。ちょっと、ね」
ゆっくりと流れていく時間。それは、目の前に舞う雪にも似た感覚であった。
「…聞かない、の?」
「聞かねえさ。言いたくないことは、言わねえ。俺はそうだからな。無理にききゃしねぇよ」
「…うん」
「けど、隣にいるから」
「…うん」
「言いたい時がきたら、話してくれりゃいい。今でも、何日先、何ヶ月先でも。
泣きたい時がありゃ、泣けばいい。その時は、さ。胸かしてやるよ」
「…うん。」
「俺は、ずっと、側にいるから」
「………うん」
少年はすんだ瞳から涙をこぼした。それは頬を伝い、落ちてゆき、結晶に溶けこむ。
ただ、ゆっくりと。
ゼロスはジーニアスの顔を胸に寄せ、黙ったまま抱き締めた。
一つの影は、女神の瞳に光を感じさせたかのようであった。
静けさの広がるフラノールの町。一筋、暖かい光が照らしていた。
END