永遠ノ人形
□1 序章
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1994年8月21日午前零時。
何もかもを包み込む真黒な闇。
残酷な程の静寂を保っていた。
まるで時間が止まっているかのような空間の中、その瞬間、何処からか女性の叫びが聞こえた。
街の外れにある一軒家。
近所の人たちからは評判のいい家。
しかし、その家の中は、とても悲惨な状態だった。
まだ幼い赤ん坊を抱きかかえながらその女性は倒れていた。
生々しい、赤い血に塗れた女。
母の血に濡れ、赤く染まっていく子供。
母親は、背中をナイフで刺されて死んでいる。
まだ温かさは微かに残っていて。
はっきりしているのは、血の赤と臭い。
赤ん坊は、母親の血に塗れながらじっとしている。
泣くこともせず、一心に母を見つめる。
否、突然のことで状況が把握できていないのだ。
ただ、動かなくなり次第に冷たくなっていく母に抱かれながらじっと母をみていた。