短編

□ジララとプリッツ
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ポッキー&プリッツの日(11/11)記念夢
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休日の午後、私とジララは居間で寛いでいた。

私はソファーで寝転びながら読書、ジララはぼんやりとテレビの番組を眺めている。

二人の間にあるコーヒーテーブルには、今日のおやつのプリッツが皿いっぱいに出してあった。

といっても、食べるのはもっぱら私なんだけど。

ジララは間食をあまりしない人なのか、こうしておやつを出しておいても手を出さない。

食べてもいいよとは言ってあるんだけど、甘いのやジャンキーな味付けはあんまり好きじゃないみたい。


ぺらりぺらりという雑誌をめくる音と、テレビの賑やかな音。

そしてぽきぽきとプリッツを食べる音。

…おや?

見ると、ジララはその口布越しにプリッツを飛び出させふるふると揺らしている。

食べている、みたいだ。



「あ…美味しい?プリッツ」

「プリッツ、というのか。…美味だ」

「そ、そう…」



喜んで食べているのなら別に全然構わないんだけど…そっか、こういうのは好きなんだ?

ぽりぽりと静かに咀嚼する音が聞こえる。

テレビでは、11月11日にちなんだコマーシャルが流れた。

あー…今日ってそういう日か。だから超安く売ってたんだなぁ。

ジララも好きみたいだし、もっと買っとけばよかったなぁ。

隣に視線を移すと、相変わらずジララはプリッツを齧り続けている。

っていうか。



「おあっ!?平らげてる!?」

「…すまない。夢中になってしまったようだ」

「いや、いいんですよ!いいんですけどね!?」



皿いっぱいに広げておいたプリッツが、一本もなくなっていた。

え、全部ジララが食べたの!?そんな好き!?

ジララは最後の一本をぽりぽり食べながら、申し訳なさそうにこちらを伺いつつ俯く。

なんかあざと可愛いんですけど!



「何故か…一度食べてみたら止まらなくなってしまった」

「わ、わかる…プリッツのしょっぱさは癖になる…わかりますよ、ええ…」

「お前の分も残さなくては…と、途中までは思っていたのだが…」

「でも夢中になっちゃったと…いいですよ、気にしないでください」

「…もう、ないのか?」



上目遣いで悲しげな顔をしないでください…!

ないなんて、言えないじゃないですか…!!



「買って参ります…っ」

「!? いや、いい。ないなら、ないで」

「買えばあります!そんなお待たせしません!」

「いや、いいと言っている。止せ、いいって」



立ち上がって外出の支度を済ませ、玄関へ向かう私を追いかけてくるジララ。

いつもぼんやりしているジララが焦ったような困ったような顔をしているのが少し可笑しい。

靴を履いてドアノブを握ると、ジララがどうにか止めようと私の服の裾をつまむ。



「いいって言っているだろう。行かなくていい」

「ジララさん。私も、プリッツ食べたいんです」

「……」

「美味しそうにジララさんが食べるから、余計食べたくなっちゃいました。止めないで下さい」

「……」



自分がすべて食べてしまったことが後ろめたくなったか、ジララは黙る。

そんなところも可愛らしい。

裾をつまんだ指が離れ、ジララは申し訳なさそうに私を見上げた。

分かってくれたみたいなので、私はドアを開ける。



「じゃ、行ってきます!」

「…ああ。いってらっしゃい」



外に出てポーチから笑いかけると、ジララは観念したかのように手を振って送り出してくれた。

これはダース買いせねばなるまい。

ドアを閉め、私は小躍りする気分でプリッツを買いに急いだ。





END.

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