短編
□シヴァヴァとポッキー
1ページ/1ページ
ポッキー&プリッツの日(11/11)記念夢
―――――――――――――――
「こらシヴァヴァアアアアアアアア!」
「うっわ、あんだよ!」
「なんだよじゃないよそれー!!!」
私はシヴァヴァが口に入れている物の正体に気付き、瞬間沸騰して彼に掴みかかった。
驚きつつもシヴァヴァはもごもごと口を動かしている。
珍しくお菓子なんか食べてるなと思ったら!お前…!お前ぇ…!
肩を揺さぶり彼の持つ菓子を奪おうとするが、シヴァヴァは右へ左へと持ち前の身体能力を駆使して避ける。
「それってこれか?この菓子か?」
「そうだよ!!それそのポッキー!!私楽しみにしてたのに!!」
「ハァ?家にあるもん食っていいって言ってたじゃねぇか!そんなに大事なら名前でも書いとけ!!」
「何歳だよ!ていうか名前書くようなちんけなお菓子じゃないんだよ!!ネットでしか買えない限定フレーバーのポッキーなの!高いの!ひと箱千円はするんだよぉ!!!それを食ってるんだシヴァヴァは今!!」
「知らねぇよ!!言っとけよそんなもん!!バァカ!!」
なんて酷いんだシヴァヴァ!これ食っていいか?くらい確認しろよぉ…!!
半べそ掻きながら、茫然とシヴァヴァの口に未だなお含まれているポッキーを見る。
くっ…おいしそう…綺麗にぴかぴか光ってるチョコのコーティングが私を惹きつける…う、ううう!
虚しくなり、シヴァヴァの肩から手を離して床を殴った。
「んだよ…もうこれ一本しかねぇよ。また買えばいいだろ…」
「…限定だって言ったじゃん、もう売り切れてるんだよぉ…何種類か出たうちやっと一種類手に入れたのに…」
「知らねぇよ!たかだかお菓子じゃねぇか!惜しいならまた別のを買いやがれっ!」
「そういうことじゃないんだよ!!そういうことじゃないんだよー!!!」
「うるせえなぁ!悪かったっつってんだろ!!」
「言ってないよ!何度も謝らせてるみたいに言わないでよー!なんでシヴァヴァが悪いのにそんな偉そうなんだよー!!」
「腹減ってたんだよ!しょうがねえだろ!!」
逆ギレのスタイルが覆らないシヴァヴァにますます萎えてくる。
もはや何を言ってもシヴァヴァはこんなだし、ポッキーだって帰ってこない。
嘆息して床に伏して打ちひしがれた。
「はぁぁ…」
「…んだよ。そんなに食いたかったんなら食えよホラ」
私の顔を覗き込み、シヴァヴァは口に咥えた最後のポッキーを指差す。
食いかけを食えって?
食えるわけないと思って馬鹿にしてるんだ…許さない、許さないぞシヴァヴァーーーー!
「うーーー!!」
「うぉっ…マジで?」
オーラが漲り、私はやけくそでシヴァヴァのポッキーに口をつけた。
一口分の長さが口に入るのを感じ、唇の先でポッキンと折る。
口を押え、舌と歯、口内全体で貴重な一口を味わう。
芳醇な香りと果物の味わい、コクのあるチョコとプレッツェルの品のいいサクサク感に舌鼓を打つ。
「う、うまぁ…♡」
「……」
頬っぺたが落ちてないか、両手で押さえて確認したくなるほどの美味さだ…。
なんて美味しい…美味しすぎる…。
こんな美味しいポッキーを…シヴァヴァは一人でひと箱食べたというのか…。
恍惚から怒りを再び思い出したが、通り越して逆に悲しくなってきた。
「ふっ…うぅぅ…もう無いんだ…」
「おゥ…もういいのか?」
「…もう顔近づけたくないからいい…」
「ハン、そうかよ」
シヴァヴァはつまらなそうに鼻で笑うと、残りのポッキーをむしゃむしゃと全て食べて飲み込んでしまった。
ああ…本当になくなっちゃった…。
悔しさと寂しさから涙が出てくる。
「…ごちそうさん」
「うおおお!嫌味かコノヤロー!!ムカつく!!今日の分の私の家事代わってよね!!」
「あァ!?それとこれとは話が違……まァ、いいぜ。いいもん見せてもらったかんな」
「はぁ?どこまで意地悪なの!シヴァヴァのバカー!!」
私がお菓子に嘆いているのがそんなに面白い?にやにやしちゃってクソー!!
「シ〜ヴァシヴァシヴァ!まぁまぁ!今回は見逃せよ!今度宇宙でいっちばんウメェもん持って来てやっからよ!そのポッキーとやらよりも!」
限定品ポッキーと比べられるものじゃないし、代えが利くものじゃない。
でもそう言ってくれるシヴァヴァの快活な男気やら優しさやらを感じて、悔しいけれどそれ以上の文句は言えなかった。
END.