短編

□桜の季節だから
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桜の季節だから。



「ゲロ…っ な、なんだあれは…!」

「ん?どうかした?」

「見事な木だ…。あの木はなんという名だ」

「あれね、サクラモドキっていうんだよ」

「名もみやびだな」

「そうだね。たわわな花が綺麗だね。モドキとはいえね」

「? どういうことだ」

「もともと地球のサクラっていう木を真似て作られたらしいんだけど、失敗したの。だから、サクラモドキ」

「ほう。綺麗だがなぁ。何が問題なのだ」

「うーん。この距離なら綺麗に見えるでしょ?」

「うむ」

「だけど近づけば近づくほど花が少なくなって間近で見上げると花はなくなってしまうの」

「なるほど。興味深いな」

「近づいてごらん。見えなくなるだけで花は取れるらしいから」

「いいだろう。お前にくれてやる」

「ははは、ありがとう」


「まったく少なくならないぞ」

「もっともっと近づかないと」

「これでもか?」

「もっともっと」

「…………」

「どう?消えた?取れそう?」

「いや…我には目にも見えるし取るのも容易いのだが」

「そうだろうね。だって嘘だもん」

「!? な、お、お前まさかこの我を謀ったか!」

「ひっかかるほーがマヌケなんですー!べろべろばー!」

「くっ〜! ひねり潰す!」

「あ、ちなみにサクラの木は毛虫がいるから早いうちに離れたほうがいいよ」

「っっっっっ!!!!!」

「なーんてうっそー!この前農薬で駆除したからいまっせーん!」

「うぉぉぉぉおのれまたしても!貴様絶対に許さん!」

「こっこまーでおーいで!おしりぺーんぺん!」

「いいだろう後悔させてやる!待てこらーーーー!」




桜の季節だから、意味なくからかったりしてみたい。

走りつかれた後の呆れた笑顔が、陽気な春によく似合ってると思うんだ。

なにもかもうまくいくと思えるくらい、幸せな気持ちになるしね。






END.

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