短編

□Good morning
1ページ/2ページ




今日は休暇を貰ったとガルルから聞いていた。

しかし昼近くになってもガルルが起きてくる気配がなかったので、とうとう起こしに行ってみることにした。


起こしに来たというのに、なんだか起こしたら悪いような気がして私は忍び足になる。

ガルルが横たわるベッドに近づき、その顔をのぞく。

やはりすやすやと寝ているようだった。

さてどう起こしたものか。

揺り動かすのは乱暴か?声を掛けて起きてくれればいいんだけど。



「ガルルさーん…ガルル、さーん。朝ですよー。いやもう昼になるのか…起きませんかー」



日頃の疲れを感じさせない彼ではあるが、かなりのハードワークをこなしているのは勿論知っている。

今日一日寝かせてあげるのも優しさだろうか。

でもそれじゃあ、私が退屈…。

いや、でもそれはただのわがままだよなぁ。

とか、考えているときに、ガルルは短く唸ったかと思うと、にゅっと腕を伸ばしてきた。



「ッ!!」

「後、五分」



素早くその腕は私を絡みとり、勢いよく布団の中へ引き摺りこんだ。

ガルルと密着しながら布団を被っている状態だ。

甘えた常套句をガルルは口走る。

もしや起きていたのかと顔を窺うが、やはり目を瞑り、安らかな寝息を立てながら寝ている。

とはいえ抱き枕よろしくしっかりと抱きすくめられ、身動きが取れなくなった。



「どうしよう…」



寝ぼけてやっているのならある意味すごいな。

起きなきゃとは思うんだけど、まるで呪縛されているかのように私は動けないでいた。

まず布団が悪い。ふかふかで幾分目が覚めた後でもまた寝たくなってしまう。

そしてガルルが悪い。顔が近いわ、肌が密着してるわで、こんな状況じゃなかったら酷く恥ずかしい。

ガルルの肌は、意外に筋肉質なのか少し硬く、そして体温がほんわかと私を温める。


まずい。これは、まずいし、そしてずるい。

一緒にこのまま寝てしまおうか。

誘惑に負けそうになる。


さっきまでの決心が一気にかき消された私は、本格的にそこで寝てしまいそうになっていた。

が、そんなときに、ぱちりとガルルの瞼が開かれる。



「駄目じゃないか、そんなでは」

「ガッ ガルルさん!…まさか、いえ、やっぱり起きていて!」

「良い妻ならばねぼすけな夫を優しく起こしてやらなくては。一緒に寝こけてどうするんだね」

「試してたんですか!?寝坊までして!?何してんですかガルルさん!起きてるならさっさと起きててください!!!」



かあっと怒りか恥ずかしさからか血が上り、私はガルルから身を引きはがして飛び起きる。

後ろでは不服に思ったのか「優しく…」と残念そうにガルルが呟いている。

知らないんだから。人の心をもてあそんで。

ガルルに背を向けてベッドの淵に座りこむと、後ろからガルルが抱きしめてきた。



「お早う」

「…お早うございます」



まるでさっきのことなんか気にもせずに、ガルルは照れたままの私に頬ずりをする。

それが妙に心地よくて、私もついに怒りを忘れて幸せに浸った。









END.
後書→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ