短編
□ジョリリとトッポ
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ポッキー&プリッツの日(11/11)記念夢
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明日は休日だ。
仕事終わりに安酒と簡単なつまみを買って、帰路につく。
家で私を出迎えたのは、ジョリリだった。
彼とは異星間交友の仲というか、いつもこうして遊びに来てくれる。
最初こそ彼のペースに流されっぱなしではあったが、そのまったりとした雰囲気が好ましかったので、合鍵さえ渡す仲…親友と言ってもいいだろう。
「ただいまぁ。つかれた〜」
「おかえり〜。おつかれサン」
ジョリリのゆるーい労わりの言葉が染み渡る。
きつい辛い連勤で荒んだ心が癒されていく…。
ケロロ小隊や日向家にとっては、ジョリリは微妙な存在みたいだが、この雰囲気が、空気がたまらなく和むと思う。
私が風呂に入って出る間に、ジョリリはビールを冷やし、テーブルにつまみを広げておいてくれた。
「わっ、ありがとう」
「ほいほい。いいってことよ」
「じゃ、始めますか!」
「あいよ」
乾杯の合図と共に、私とジョリリは杯を合わせた。
他愛ない会話をしながら、私とジョリリはアルコールを飲み進め、つまみを消していく。
食べたいものを食べて、ひと時の間、このほろ酔い空間に浸りたい。
大分出来上がってそろそろ眠くなったころ、私は最後のアテが食べたくなり、台所からソレを持って戻ってきた。
「ん〜?なんだ、ソレ」
「トッポです!デザート♪」
「甘いヤツか…俺に言わせりゃ〜……ん?」
「飲みすぎですよ…言葉出てないじゃないですか」
「そうかぁ?」
「はい、ジョリリさん用にこっちね」
ジョリリは機嫌がいいのか、肩を揺らして笑っている。
彼には少し甘すぎるかもしれないと思い、トッポと一緒に乾物のいかそうめんも持ってきた。
チョコとイカの匂いがミスマッチに香ってくる。
いかそうめんを噛みながら、ジョリリは楽しそうにゆらゆらとしている。
「気が利くなぁ、美味いんだこれが」
「そうでしょー?」
「…そのトッポってやつぁ、美味いのか?」
私が食べていると、ジョリリは興味深げに見上げてくる。
包装からトッポを一本取り出し、ジョリリに差し出した。
「食べてみます?」
「ん」
が、ジョリリはそれを受け取らず、私が咥えているトッポを掴み、引いた。
ぽっきん、と唇辺りで折れたトッポを、ジョリリはためらいもなく自分の口に入れた。
「あっ…ああ!」
「ん〜…あまい」
「ちょ、なんでっ…」
「こっちのが美味そうだったから」
だからってそんな、私の食べかけを!
もぐもぐごくんと、最後まで食べてしまったジョリリは、気にした様子もなくいかそうめんに戻った。
…ジョリリにしてみれば、特別な意味などないのかもしれないが、この緊張感はどうしたらいいのだろうか。
若干眠気も酔いも覚めてしまった。
その点トッポってすげぇよな、最後までチョコたっぷりだもん。
有名なCMの、トッポ完全勝利のセリフがフラッシュバックする。
…まぁ、いいか。トッポが美味しいから、なんかどうでも良くなってしまった。
酒宴の最中のじゃれあいに特別も何も、野暮なことだろう。
明日は休みだし、さっき覚めた分、今日はもう少し飲んでも罰は当たるまい。
日付が変わる手前、かろうじて例の記念日に、棒状菓子を食べ、私とジョリリはなんでもない宴を楽しんだ。
END.