短編

□暇人イマジン
1ページ/1ページ




晴れた日の午後、地下の明るい部屋で。



「たぁいちょうおお…」
「なんでありますかー、死にそうな声だしてー」
「暇すぎるよぉ…侵略しようよー。せめて作戦会議しようよー。それかマリカしようよー」
「マリカって…真面目か不真面目か分からんでありますな」
「じゃあ桃鉄かスト6」
「どう転んでもゲーム!」
「暇なんだよ…脳みそが溶けそうですふわふわふー」
「…いかん、侵略がままならないばかりに隊員の知能数がだだ下がりしている!」
「責任、ちょっとは感じてくれましたか。じゃあ侵略しましょう」
「そんなちょっとお茶しましょうみたいなカンジで言われても…」
「……」
「…なんでありますか」
「…とりあえずツッコミ入れて問題から話を逸らそうとしてません?」
「ばばばばっ!バカ言ってんじゃないヨ!逸らしてない!」
「…まぁ、いいです。暇だなぁ。隊長は多趣味でいいですねー。退屈しないでしょー」
「そうですね。どうなんでしょうね」

「なんで、侵略進まないんでしょうね。こんなにがんばってるのに」
「頑張った分だけ成果が出るならラクなんでありますけどねー」
「皆遊んでるから…順応して油断しまくって金使いまくってるから…侵略が進まないんだよな…」
「あれ?さっきマリカとか言ってたよね?チミ。自分を棚上げしてる?」
「こんなんじゃいつまでたってもケロン星に戻れないじゃないですか!いつまでも戦地のど真ん中じゃないですか!」
「穏やかな戦地の真ん中で、今更何か困ることがあるでありますか?宇宙通販があれば不便しないじゃない」
「なんて酷い怠惰な台詞!そんなパンが無ければケーキな精神になってるのがそもそもダメっ!ダメ、ダメ、ダメ!!!」
「そこまでダメダメ言わなくても…」
「いいですか隊長!私はね、出来ればぱっぱと侵略してぱっぱと星に帰りたい!」
「ケロンシックでありますか?しょうがないなぁ、治療するのに手間隙かかるっつーのに」
「違う!私はやる気のカタマリDA!だからちゃきちゃき仕事を終わらせてアフターシックスをホームでエンジョイしたいんDA!」
「うむ。皆そう思いつつもサービス残業や接待ゴルフでひいひい言っているのが現実なんですよ」
「真面目に聞けよ!」
「だったら真面目に話してよ!変に面白くしたらツッコミや重ねボケしたくなるでしょ!」
「そうか、芸人魂でしたね隊長」
「そう。分かってくれて嬉しいであります」

「ぶー」
「…どうしたんでありますか。なにか、本当は言いたいことがあるんじゃないでありますか」
「…あるよ?」
「聞くでありますよ」
「…侵略進まないし、暇すぎるから、いろいろ考えるんだけどね、妄想を」
「はあ」
「……もし。もし、この侵略が終わったら、ケロン星に帰ってね、隊長のご両親殿にご挨拶に行こうかなって」
「…へ?なんで…」
「隊長、いえ、ケロロさんをお嫁にくださいって言うんだ」
「…いやいやいやおかしい。え?チミがワガハイの両親に?てかそれ言うなら我輩、男だし婿では…って、え?」
「じゃあ隊長が私を嫁としてご両親殿にご紹介してください」
「え?…え?」
「うぜえなあ、次え?って言ったら殴るぞ」
「すいません、チンピラスマイルよしてください」

「…私じゃ、ダメなんですか。そんなに戸惑うってことは」
「いやその、…あの、つまり、我輩のこと、好きだったんでありますか」
「そーです」
「そ、そーですか」
「…脈なしなら、今はっきりフってくださいよ。きっぱり諦めるんで。いややっぱ泣くかも」
「ふ、フらないでありますよ!ただ、我輩、その…こんな、まっすぐ不意打ちで言われるとは思わなくて、どうにも…照れくさくて」
「…ふふふ。隊長って、もしかして私のこと好きなの?」
「そ、そーです」
「そーですか!じゃあ、私の妄想、現実にしてくれますよね?」
「したいとは思ってます」
「ださっ!煮え切らない答えっ!それでも男かよ!」
「無責任な発言をしないだけイイオトナって評価をください!」
「もー。やる気疑っちゃうなぁ。本当は結婚とかめんどくさいから侵略怠慢するとかならヘコむんですけど」
「それはない!大丈夫でありますよ!!」
「いや力強く否定されても恥ずかしい」
「ゲロッ…」

「…こんなのんびり世間話できるのも、地球が平和で侵略が滞ってるせいなんだ。なんというジレンマ」
「ロマンスのシーンが世間話でくくられてしまったであります」
「暇だなぁ。侵略したいなぁ帰りたいなぁ」
「両想いって分かったんなら今いちゃいちゃする時間でも良いと思うんでありますけどね」
「いちゃいちゃしたいんだ。やらしいのう」
「あ、なんかいまカチンときたよ我輩」

「頑張ろうね、隊長。私の夢、実現してよね」
「ゲロゲロゲロ!まかせとけっ!」



叶えたい未来があるから、今を一緒に生きる。
ささやかで大きな目標を、密かに掲げてみよう。
大好きな笑顔が、もっと増えているはずだから。





END.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ