Short story

□勝手なヒト。
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本棚の間を縫い歩く歩調は重い鉛が付いているのではないかと思うくらいのんびりとしたもので…

本の背表紙を頼りにしまい込むが、まだ腕の中に積み重なっている重みに、より一層足取りは重くなっていく。




ぶつくさと文句を垂らしながら、やっとの思いで残る本は半分程になった。

とは言っても、まだ半分もあるのだ。
やっぱ部活には行けないかと、もう当分前に諦めたはずなのにまだ引きずる。


もう考えるのやめよ…
余計にイヤになってくる。
無心にやろ…無心に…


そう自分に言い聞かせ、無理矢理隙間に本を押し込めた。



暫くして、リョーマは何冊かの本を両手で持ち、本棚を見上げて突っ立っていた。


「……ムリだ…」

ポツリと呟き溜め息を吐く。
自分のこの背の高さが呪わしい。
その前に、何故全校生徒誰もが届く大きさの本棚じゃないのか。そこが問題だ。と、自分を責め立てる前に学校を責める。



「こんな所にいたのか…」

不意に背後から聞き慣れた声が聞こえ、驚いて振り返った。

「な、何で此処にいんの?!」

他校生である事が一目瞭然なその格好で、堂々とこの場に立っているのは自分の恋人である跡部景吾。

「来ちゃ悪かったか?」

「ィャ、悪い悪くないの問題じゃないと思うケド…。よくここまで来れたね」

「あぁ、氷帝テニス部部長として青学の顧問に話があると言ったら簡単に通してくれた」

「それ…ウソでしょ…」

「当たり前だろ。お前に会いに来ただけだ」

ウソついて他校に上がり込むなよと頭中では思ってはいるものの、それよりもわざわざ会いに来てくれたと言う事が嬉しくて結局それは言葉にならずに消えた。


「そうだ…調度良い所に来てくれたょ。コレ、しまってくれない?」

ハイと、その腕に数冊の本を遠慮なしに置けば、跡部の眉が不機嫌そうに寄った。

「ォィ、何で俺が…」

「コレ片付け終わんなきゃ帰れないの。文句言わずやって」

さっさとその場を去るリョーマを見て跡部は溜め息を零し、リョーマの手の届かなかった所の本をしょうがなくしまい始めた。





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