Short story
□your valentine.
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2月14日
St.Valentine's Day.
ヨーロッパなどでは男女問わず、花やケーキ、カードなど様々な贈り物を恋人や親しい人に贈る日。
片想いの女性が好意を寄せる男性にその想いを打ち明けたり、女性のみが贈り物をする習慣があるのは日本だけらしい。
勿論、それに答える日があるのも日本だけだ。
日本は他国より引っ込み思案で小心者が多い為、この様なイベントの力を借りなければ自身の気持ちを打ち明けられないのだろう。
なんとも面倒な人種だ。
毎年無理矢理贈りつけられるカラフルな包装物にどれだけ想いが込められているか判らないが、恋人がいる今は無関心だった物から迷惑以外の何物でもないものになった。
部活を引退し、休日に学校へ行くこともなくなり無理に外出する必要もなく、今日は一歩も外へ出ないつもりだ。
決して贈り物が少なくなる訳ではないが、女共に直接渡される事がなく去年よりは快適に過ごす事が出来そうだ。
「家から出たくないのはわかるけどさ…だからっていきなり拉致らないでよ」
部活が終わった瞬間を狙ったかの様に無理に車に乗せられ連れて来られたリョーマは、ムスッと膨れて跡部を見るが、跡部は謝罪する様子もなく偉そうに足を組んで深くソファーに座っている。
「…まぁ、荷物が多かったから助かったには助かったケドね」
そう言うリョーマの腕から音を立たせて下ろされた荷物は、ピンクやら赤に包まれた物だった。
「随分貰ってきたじゃねぇか」
それまで黙っていた跡部が、床に置かれたプレゼントに不機嫌そうに眉間に皺を刻んだ。
「まぁね。せっかくくれるって言うんだから、もらわなきゃ」
リョーマは適当に一つ掴むと跡部の横へ腰を下ろした。
カサカサと包みを開き、出てきたチョコを口へ放る姿に跡部は一層と顔色を曇らせた。