Short story

□♂だけのひな祭り
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「ねぇ、この豪華な飾り付けはナニ?」

「ん〜?…ひな祭りだよ〜」

隣りでふにゃりと笑むジローから出て来た男には関わりの無い単語に、リョーマはまた訳の判らない事を始めたと目の前の光景を見渡した。

トンカントンカンと金属がぶつかり合う音や、キュイーンと削られ切断される音。
大掛かりのセッティングにこのイベントの企画者は何を考えているのやらとリョーマは溜息を吐く。

「企画者ってダレ?」

「こんだけムダにお金かけるのは跡部ぐらいだC〜」

最もな人物にリョーマはやっぱりね、と俺様なあの人を思い浮かべる。
跡部も跡部だが、この騒がしい中大きく欠伸をして目を擦るジローに、やはり氷帝は変わり者ばかりだと今更ながらに思った。


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次の日、会場に訪れるとそれはそれは豪華な…

「…なんで男ばっかでひな祭りなの」

「他校生やら全校生徒を招いてもよかったんだがな、後々邪魔になりそうだからやめた」

だから少人数になったと言う斜め後ろに立つ主催者を仰ぎ見る。


「アンタ…何企んでんの」

怪訝そうに問えば、跡部は口角を吊り上げた。

「あーん?別に何も企んじゃいねぇよ」

その笑みを見せられて言われても信じ堅いものがある。

「どっちにしろすぐに判る」

リョーマの艶のある髪をくしゃりと撫で、跡部は踵を返した。



所変わって派手な衣装が並ぶ部屋へ連れて来られ、本日の参加者が勢揃い。
とは言っても、氷帝、青学のレギュラーだけだが。

「今日は招待してくれて有難う」

大石が代表でにこやかに礼を言う。

「呼んでくれたのは有り難いけど、コスプレするとは聞いてないよ?」

不二が笑みを浮かべたまま薄く目を開き、衣装へ視線を向けた。
それは勿論、今日が桃の節句なだけあって煌びやかな着物である。

「えぇやん、別に。メイド服着ろ言うんやないし」

着る気満々の忍足が早速漁り始める。が、その手を跡部が遠慮無しに掴んだ。

「いきなり何や、痛いやないか」

「忍足、テメェ何着ようとしてやかる」

跡部が唸る様に咎めれば、忍足は自分の手に持つ着物と跡部の顔を見比べ、ヘラッと口許を緩めた。

「何て…御内裏さん」

「男雛はこの中で天皇に相当しい俺様に決まってんだろうがッ!」

忍足の手から着物を分捕り声を荒げる跡部に、忍足が眉を寄せる。

「天皇て…どうせ御雛さんは越前なんやろ」

「当たり前だろ。このイベントは俺様とリョーマの為に開いたんだからな」

「どう言う意味だ?」

すかさず問うて来た手塚に跡部がよくぞ聞いてくれたとでも言う様に、偉そうに前髪を払う。

「今日は俺様とリョーマの軽い披露宴みたいなものだからな」

跡部の堂々たる発言に暫し周りの反応が遅れる。


「ちょっと、聞いてないんだけど」

こう言うのはお互いの了承があって成り立つもんでしょ、とリョーマが不機嫌に見上げてくる。

「あーん?了承も何も、決まってる事だから良いんだよ」

それに…と跡部がリョーマの腕を掴み、自らに引き寄せる。

「雛祭りっつったら結婚だろ?」

「だろって…」


さっきから言ってる事、アンタが勝手に決めた事だし…



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