Short story

□Birthday cake?
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冷たい北風が肌を刺す。
どんよりとしたこの季節によく見る灰色に覆われている空を見上げて、こんな時期に生まれて来たのかと思う。

だからと言ってどうこうと言う訳ではないが…




リョーマは玄関を出てその前に止まっている黒塗りの車に溜息を吐いた。
どう見ても周りの景色に不釣り合いで違和感を感じる。
近所の主婦の皆さんに見付かる前にと歩を進め、運転手の開けているドアの奥を見れば偉そうに足を組む恋人の姿があった。

「こう言うので来ないでって言ったよね?」

膨れながらも乗り込めばグイッと肩を抱き寄せられた。

「あーん?今日は特別な日だろ。主役の姫君を迎えに来るのには相当しいと思うが?」

楽しげに口角を上げる跡部を冷めた目で見やる。

自分勝手な俺様は神経がフツーじゃない。


何だか苛立ちが立ち込め、思い浮かんだ嫌味を口にする。

「姫君って…何だかアンタのトコの天才サンを思い出すよ」

自分を『姫さん』と呼ぶ氷帝学園の伊達眼鏡。
その人物を思い出させる一言に、たちまち跡部の顔が険しくなった。

「アイツと一緒にすんじゃねぇ」

普段からそう顔色を変える事のない跡部の拗ねた様な子どもっぽい表情に、今度はリョーマが口角を上げた。

「ケーゴ、忍足サンのことホントにキライだよね」

生意気に見上げてくる顔に余計跡部の顔色が険しくなる。

「お前に会う前はこんなじゃなかったのにな」

いつの間にか走り出した車に軽く揺られ、跡部は肘を着いた手に顎を乗せ外の景色へと目を移した。
通い詰めて見慣れた家並みが目の前を次々と通り過ぎて行く。

「何?アンタ達の友情を壊したのは俺のせいだって言いたいの?」

小首を傾げて睨まれても大きな瞳にはそこまで迫力はない。

今会ったばかりだと言うのに、互いに眉間に皺を寄せている状況に跡部が軽く息を吐き出しリョーマの方へと向き直った。

「リョーマ、俺といる時に他の男の話すんじゃねぇよ。ソイツのせいでお前の機嫌が左右するのが気に食わねぇ」

格好付けて独占欲丸出し発言をする跡部に、リョーマはやれやれと首を振る。

「オトコの嫉妬はみっともないよ?」

「…言ってろ」


眉間に皺を寄せたまま、再び肩を抱く困った恋人に、リョーマの気分はほんの少しだけ晴れた気がした。




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