Short story

□勝手なヒト。
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何時でも何処でも勝手なあのヒト。
でも、それに流されてしまう自分も…

あのヒトに負けないくらい自分勝手なのかもね。




この先絶対に無縁であろう本が、ずらりと並ぶ本棚に囲まれた部屋にリョーマの姿があった。

先程まで感じていた部活に行けないもどかしさも今では諦めもついた。
退屈だと心中の何処かで呟きが聞こえ、それが何処から呟かれたものなのか、それさえ考えるのにも億劫に感じる。


リョーマは此処に訪れる生徒の本の返却や貸し出しを面倒だとあからさまに態度に出しながら行い、早く時間が過ぎないだろうかと何度も時計に目を向ける。

だが、一向に変わらない針の動きに溜息を吐き、肩肘を付いて開け放された窓から空を見上げた。



見渡す限りの青空は、テニスには持って来いの晴天。
なのに自分は静まり返った堅苦しい本に囲まれた部屋で、何もせず時を無駄に過ごしている。

それを改めて自覚すると、また沸々とイライラのボルテージが上がっていく。


今すぐにでも、此処から飛び出して部活に行きたい。



そう沸き上がった気持ちも時間が経てば落ち着いて来る。
その繰り返しに疲れを感じ大きく息を吐き出すと、窓から目を離し、目の前に積まれた本の山を眺めた。

ある教師に、片付けて欲しいと頼まれ引き受けたのだが、まさかこんなにも量があるとは思わずこれを今日中に片付けられるのかとリョーマは眉間に皺を寄せた。


取り敢えず、見ているだけで減る筈が無い。数冊を手にして立ち並ぶ本棚の間へと歩を進めた。








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