Short story

□言の葉
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貴方を想うこの気持ちを伝えるにはどうしたら良いのだろう。


『好き』と言う言葉は子供っぽ過ぎて上手く使えない。
だからと言って『愛してる』と何回言っても、この想い全てはその言葉に収まり切らない。




『愛してる』以上に、愛を伝えられる言葉があったら良いのに…






子供は好きと言う言葉を簡単に吐き、自分の想いを率直に伝えられる。
そう考えると、その無邪気さや幼さに羨みを感じるが、今溜め込んでいるコレは、そんな幼い子供の様に済まされる想いじゃないから厄介だ。


「ハァ…でも子供ってイイよね…」

「何だいきなり…お前だってまだ子供だろうが」

机に突っ伏した状態で漏れた言葉に、本へと向けられていた視線がこちら移された事が何となく判った。

「そうじゃなくて、もっと小さい子供。自分の思い通りに回りが動くと思ってる時期…」

少し顔を上げて眉を寄せて見てくる顔を見返せば、あぁこのヒトもまだその一人だった…と軽く溜息を吐いてまた顔を伏せた。


「何が言いたいかよく判らねぇが、思い通りに行かない事でもあったのか?」

パタンと本の閉じられる音を聞いて伏せている身体を起こした。

「まぁそう言えばそうなんだけどね…」

「じゃあそう言わなかったらそうじゃねぇって事か?」

「ねぇ、話難しくするのやめてくれない?」

今度は後ろにあったソファーへと身体を倒した。
それに釣られて動く視線に目を合わせる。


「たださ…自分の気持ちを素直に言えるコトが羨ましいと思っただけ…」


そう言って、それをする事が出来ない自分に悔しさを感じ目を伏せた。


「お前は誰に何を言いたいんだ?」

少しの沈黙の後のその台詞が、やたらと響いて聞こえる。

「…誰に何を…」

薄らと目を開け天井を見詰める。

誰って言うのは勿論今髪に指を絡めてくるそのヒトであって、何をって言うのはそのヒトへの溢れ出すこの想い…−


「ねぇケーゴ…愛してる以上に愛を伝えられる言葉って何?」

むくりと起き上がって改めて聞けば少し戸惑った反応を返された。

「…それだけじゃ足りねぇのか?」

「ウン。ぜんっぜん足りない」

真面目にそう言えば、くつくつと笑われた。

「何笑って…」

「勿論、その言葉は俺様の為だろうな?」

頬に触れた冷えた指先に、少し遅れて頬が一気に上気した。
それを見て、満足気な笑みを浮かべられてムッとふて腐れてみる。


「まぁ、確かにそれだけの言葉じゃ俺様への愛は語り切れねぇだろうな」

そんなに自分に酔いしれている風に言われると、呆れてその気持ちも少し薄らいだ。


自惚れと言うか自意識過剰と言うか…
どっちも似た様なモノか…


「滅多にそう言わないお前に言われるのもたまには良いが、やっぱ俺様にはそれだけじゃ足りねぇよ」


髪を梳いていた指先が、いきなり手首を捕まえて気付けばまたソファーの上へと仰向けになっていた。


「何…言葉じゃ足りないから身体を要求するっての?」

「あぁ?お前が愛を伝える方法を聞いて来ただろうが。言葉だけが全てじゃねぇんだぜ?」

口端が吊り上がるのを見て、自分のペースが簡単に崩された事に自嘲する。

「言葉って便利なのか不便なのか判んない」

「言葉はただの道具の一つに過ぎねぇだろ。不便だと思えばまた違う道具を使えば良いんだよ」

「…なんかそう言うと言葉の有り難みが無くなる」

「じゃあ、お前は有り難みを感じながら言葉選んでるのかよ。随分毒舌だが…」

「アンタに言われたくナイ…」

ぷぅと頬を膨らめ顔を顰てみせるが向けられる態度は変わる事はない。


「煩せぇよ。もう黙ってろ」

同時に塞がれた唇から受ける温度を感じながら、結局は愛なんて囁けないまま胸の中にまた蓄積された。


言葉が全てじゃない。

確かにそうだけど、すぐにHをするのもどうかと思う。手っ取り早く確認出来る方法でもあるが…


「ま、嫌いじゃないからイイけどね」

離れた瞬間小さく呟いて、言葉の変わりに態度で示してみようかとその広い背中へと腕を回し、この身を委ねた。




End...........


超突発的SS…
突発過ぎて時間も余り掛けられず、ただ『言葉』に対してくどい話になってしまいました。

しかも、裏に行く前で終わらせると言う…
書く気力がありませんでした。


最初に考えていた設定と全く違うのはこの際気にしません。



08.4.23


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