Short story

□天才と馬鹿
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ねぇ…天才サン、アンタは俺の為だったら何処までバカになれる?




「いきなり何やねん」

「別に…チョット思っただけ」

悪戯っぽく笑うその顔を忍足は怪訝そうに見た。
この子供は何時も突拍子もない発言をする。
それは判り切っている事たが、それに素早く返答出来る程まだ慣れていない。


「ねぇ、どこまでバカになれる?」

まだしつこく聞き返してくるそれに、忍足は眉を潜めて考え込む様に軽く頭上を見上げた。

「なんやいきなりで判らへんけど、リョーマの為やったら何処までも馬鹿なれるんちゃうかな…」


関西では余り発せられ無い言語に軽く違和感を覚えながらも、それに答える。
『馬鹿』と言っても、それに対する心境や思考は人それぞれ違うし、この子供が求めている『馬鹿』と自分自身が考える『馬鹿』とでは違うかもしれない。


「ふ〜ん…天才サンをバカにするには俺が必要って事だね?」


何かを企んでいるのか、リョーマの楽しそうな表情に忍足は困り果てた。
取り敢えず、気分を損ねない様に会話を続けようと試みる。


「何考えてんやか判らんけど、リョーマその天才サンてのやめてくれへん?」

「何で?跡部サンが侑士は天才って言ってたよ?」

またアイツの話か…と心中で悪態を吐く。
何かとリョーマにちょっかいを出してくる辺り、リョーマに関心を持っている様だが…


「リョーマ、俺の前で跡部の話すんな言うたやろ」

「でも侑士その理由教えてくんなかったじゃん」

むぅと膨れるリョーマに、忍足は一瞬呆けて苦笑した。
普段クールだと言われる彼が、自分の前では此処まで表情豊かだと思うと嬉しくもあり、可笑しくも感じる。


「理由なんて判っとるくせに。それでも言わせる気なんか?」

「ん、だって言ってくんなきゃ判んないじゃん?」

小首を傾げて言う姿は可愛いが、その笑顔は確信犯だ。
忍足は参ったと言わんばかりに軽く息を吐く。


自分のペースがここまで崩されるのはコイツだけやな…


「お前の口から他の野郎の名前が出んのが嫌やねん」

「ウン。知ってた」

ニッコリして言うリョーマに、やっぱなぁ〜と忍足はらしくも無くその場でうなだれる。

「…どうせ俺はリョーマ馬鹿やからな///」

「ウン、それも知ってた」

クスクスと笑いながら細い指に髪を梳かれ、その顔を見上げる。

嬉しそうであり、悪戯が上手く行った様な、それでも呆れて失笑している様な複雑な表情だったが、こちらを見るその力強い光を灯す瞳だけは何時もと変わり無く、それに思わず見惚れる。


「リョーマ、めっちゃ好きやで」

「知ってる」

「…リョーマは?」

「−−ッ////」


自分に振られるとは思っていなかったのか、一気に赤面していくのを見て、今度は忍足が悪戯っぽい笑みを浮かべる。

はよ言い?と促せば、顔を歪ませるそれに満足する。


暫くしてどうやら諦めがついたらしく、大きく息を吸い込み目線をずらして恥ずかしそうに呟いた。



「俺も…スキ///」

「うん、知っとった♪」



結局はお互いがお互いに馬鹿やって事で…


自惚れても良いんかな…






end−−−−


初の忍リョ!!
何時もは跡リョばかりなのでたまにはと思いまして…。
毎回ゆーしは片思い設定で可哀相なトコにいらっしゃるので今回は両思いにしてみました。

案外、両思いも面白かったvV
跡リョも好きだけど忍リョもなかなか良いなぁッ!!

…と言うても、微妙に忍リョ←跡風味になってますが…しかも会話がオカシイですし…


あんまり気にしないで下さい。お願いします…








2008.3.15.


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