Short story

□勝手なヒト。
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日も徐々に傾き始めた頃、漸く机の上が綺麗になった。
後は、リョーマの持つ3冊の本をしまえば本日の当番も終わりだ。

その本をしまう為に歩き回るリョーマの後ろを、跡部が着いて歩く。
何だかその違和感が気になって仕方がないが、取り敢えずは頼まれ事をとっとと終わらせたいので気に止めない様に努めた。




「やっと終わった…」

んーと背伸びをして軽くなった腕をぶんぶんと振った。もう当分本には触りたくない。
勿論、教科書と言う本にも。


「終わったか。どうする、もう帰るか?」

2人で本棚に凭れて視線を合わせないまま話をする。

「ん、帰る。部活行ってももう終わりだし…」

でも何だかスッキリしない。
そう言えば今日は全くと言って良い程、身体を動かしていない事に気付く。

「ハァ…やっぱり身体動かしたい」

こんな天気の日に本に数時間も囲まれていたのと、身体を動かしていないと言うストレスのせいで変に身体が疼いた。


「でも部活終わりなんだろ?今日ぐらい我慢しろ」

頭にポンと手を乗せられ、リョーマはそのまま撫でる様に動き始めた手の心地良さに目を細めた。


「…ケーゴ」

「何だ?」

間延びした呼び方で呼べば大好きな顔がこちらを向き、何だか堪らない気持ちになって自然と頬が緩んだ。

「…アリガト」

「何だいきなり」

リョーマらしくない、いきなりの言葉に跡部の瞳が僅かに見開いた。

「片付け手伝ってくれたから」

リョーマは少し居心地が悪そうに身じろぎ、それと…と言葉を繋ぐ。

「わざわざ会いに来てくれて…礼を言うのもたまには良いでしょ?」

そう言ってはにかんだ笑みを見せれば、何時の間にか跡部の端正な顔が息が掛かる程近くにあり、それに気付いた時には唇に慣れた感触のモノが触れていた。

触れるだけのバードキスを何度もされ、何が跡部にこうさせたのか判らないリョーマはされるがまま、それを受け止めていた。
普段している濃厚なものとは違い、戯れる様なキスに少し擽ったさを感じる。


リョーマの口からクスッと漏れた笑い声に、跡部は一端動きを止めるとぬるっとしたものでリョーマの唇を割った。

あ、結局そっちのキスもするんだ…とリョーマは素直に口を開いて跡部の舌を招き入れ、静かに目を閉じた。






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