オリジナル
□ハロウィンパーティー。
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ででん。と机の上に置かれた毛玉。
今の心情を一言で表すとしたらまさに『試練』につきる。
(紅)「・・・みみとまえあし(肉球付)・・・」
既に衣装には着替えた(ジーパンにしっぽがついててビビった。そして座りにくい)
後はこの毛玉たちを装着するだけ・・・!!
隣では紫酉くんが既に黒い猫耳を手に取り瞳を輝かせている。
イヤ、分かる!
きっとめちゃくちゃ似合うよ紫酉くん!
でも俺がコレつけたら微妙じゃない!?ものすっごく微妙だよね!?
黒猫と銀狼で色合い的にも綺麗なのは分かるよ!?
でも俺がつけたら台無しな気がする・・・!!
(黒)「うわっ!チョーいいじゃん狼っ!早く付けて付けて〜!!」
俺の座るイスの背もたれに手を付き、後ろから覗き込むように顔を出した黒兎くんは、既にミイラ男の格好をしていた。
と言っても、上半身にのみ包帯を巻いていて下はダメージジーンズを履いているが。
頭や首、胸や腕にゆるく巻かれた包帯が、なんとなく普段の彼のイメージとは異なった印象を醸し出している。
(こういうの、なんていうんだったっけ・・・えっと・・・)
(紅)「・・・チラリズム・・・?」
(黒)「へっ!?」
無意識に声に出していたのか、俺の発言にみるみるうちに顔を赤くする黒兎くん。
バッっと今まで触っていた狼の衣装から手を離すと、何故か赤くなっている顔を隠す。
頭や首に巻かれた包帯の白が、その赤くなった頬をより引き立てていた。
(黒)「ちょ、そんなジロジロ見んなっ!」
(紅)「え?・・・あっ!イヤ、別に変な意味じゃ・・・!」
俺変態認定された!?(ガーン!!)
(黒)「お、お前だって上半身ちっさいベストだけじゃんかっ!あぁもうっ耳付けちゃる!」
赤くなった顔をごまかすように狼耳を持ち、俺の頭に付ける。
(紅)「ちょ、黒兎くん・・・!」
俺は、頭に伸ばされた腕を咄嗟に握り、頭に手が置かれたことで若干上目遣いになりながらも、黒兎君を見やる。
(黒)「・・・っ!!」
バッ!と手を離し、うわぁぁぁぁぁー!!!と叫び声をあげて脱兎のごとく逃げて行く黒兎くん。
え、ちょ、何なの!?
やっぱり俺モデルとして使えないの!?
あまりにもやっちゃった感じなのぉぉぉ〜!!?
衝撃で落ちた獣耳が、なんとも物悲しい。
(藍)「黒兎君、一体どうしたの?」
黒のマントを羽織り、腰より長くなった髪をなびかせて隣に立った藍虎さんは、肌蹴ているところなんてひとつも無いのにものすごく妖艶だ。
マントの下から覗くのは、キッチリとした黒のタキシード。
ネクタイ代わりの細めの赤いリボンや、マントの裏地の紅、胸元に添えられている深紅の薔薇よりも尚紅い、今まさに血を吸ったかのような唇に、思わず目が行ってしまう。
しばらくポケっとしていたが、やはり黒兎くんに逃げられたコトが自分の中で果てしなく尾を引いているようで、俺は恐る恐る藍虎さんに問いかけた。
(紅)「あの、藍虎さん・・・俺のカッコ、似合ってませんか・・・?」
(藍)「え?どうして?」
(紅)「だ、だって黒兎くんが叫びながら逃げて・・・」
(藍)「あぁ。クス・・・大丈夫。黒兎君は照れただけだと思うよ?」
照れただけ?
・・・・・あの格好に?
でも物凄くノリノリに見えたけど・・・
(藍)「・・・頑張れ黒兎君。」
(紅)「え?なんですか?」
(藍)「いや、なんでもないよ。ああ見えて黒兎君は(特定の人に)見つめられたりするのに弱いんだよ。」
(紅)「そうなんです、か?俺、ダメですね・・・お世話になってるのに気づけないなんて・・・。よし!これからはあんまり見ないように気をつけますね!」
(藍)「え、いや・・・(あれ、なんか違う方向に・・・)」
(紫)「藍虎ちゃん、紅鵺ちゃん、似合うかにゃーん?」
ブフーーーッ!!
ちょ、にゃーんて!
どうやら着替え終わったらしい紫酉くんがポーズを決めて言ったセリフは、物凄い破壊力を持っていた。
(藍)「うん。可愛いね。」
あれ藍虎さん普通――――!!?
こんなに衝撃を受けているのは俺だけですか!!?
(紫)「紅鵺ちゃん、早く一緒になろう?」
え、プロポーズ?
いやいや、これは『早く獣耳とか付けてくれ』ってことだよな。
(紅)「あ、うん。今つけるよ・・・ってアレ?」
耳が無い・・・
(灰)「動くな。」
(紅)「うわっハイ!」
突然後ろから聞こえた声。
囁く様に呟かれたのは、甘いテノール。
(紅)「は、灰猫、さん・・・?」
後ろからそっと髪に触れる手の感触。
ゆるく頭を締め付ける感覚に、やっと狼の耳を付けられているのだと気づいた。
ふっと髪をすく感覚が無くなると、目の前に影が落ちた。
(灰)「・・・うん、いいな。」
俺の前に回りこんできた灰猫さんは、悪魔の衣装を身に纏い、けれど、まるで天使のようにふわりと笑った。
(は、鼻血出そう・・・!!)
本当に勘弁して欲しい。
今、俺の顔は完全に真っ赤だと思う。
ちょっと肌蹴た胸元とか臍とかが、動くたびにチラチラと見え隠れする。
・・・目の前にいられると目のやり場に困る。困るッたら困る。
(紅)「あ、の・・・!」
(灰)「やっぱり、いいな。お前なら飼っても良い。」
(紅)「!!!?!?!」
ボンッと音がしそうなほどに沸騰した俺の頭。
飼うって!飼うってぇぇぇ・・・!
灰猫さん天然なんですかそうなんですかむしろ俺を殺す気ですかっ!?
尚もからかうようにふっと笑われて、それが『小悪魔』を連想させる。
(紅)(・・・色々心臓に悪い・・・!)
あぁ、これってやっぱり・・・『好き』なのかなぁ・・・?
その後、撮影所においてあったジャック・オ・ランタンにときめきを覚えたらしい紫酉くんが「ぼく、こっちがいいなぁ・・・」なんていいだして、充さんに「ちょ、紫酉!顔見えないから!台無しだから!!」とツッコミを入れられていた。
因みに、そのポスターのおかげか元々お菓子が評判だったのかは定かではないが、ハロウィン限定のお菓子は驚異的な売り上げだったらしい。
END