短篇

□いちご
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今の時代

ひとのココロは棘の刺さった林檎みたいだ。



甘く熟れて今や遅しと食されることを願い

光沢を帯誘うのに

触れないでほしいのだと
矛盾して拒絶するひとが多い。


もちろんそんなひとばかりではないけれど

泪が流れたことに気付かないなんてひとは減りはしない。


求めて

拒絶して

愛して

って口にして

近づかないで

って

濁ったように笑う。



矛盾

曖昧

違和感

偏見

固定概念

それらすべてを我々は古から受け継いで

どこか排他的で

愛をささやいたものを

紙で縛って

永遠なのだと

誓いあう。



一生涯にかけて不変はなくて

ひとは絶えず揺らいで形を変えるから

誓いなんてきっと自己満足に過ぎないんだよ。



それでも愛しい温もりに縋ってしまうのはひとのサガで

それはおばかな人類の追憶で

足跡なんだ。



《絶対》
なんてきっとないけど

《永遠》
なんて口にするより軽くはないけど

ずっとこの先キミを隣で見ていたいと想うんだ。


生きてくことで泥だらけになった僕だけど

すべての力でキミと

小さなキミを護りたい。


 
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