短篇
□キミの隣で眠れたら。
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雨粒ひとつ
鼻先に落ちる。
「冷たっ。」
驚いて曇天の空を見上げ首を傾げた。
「?」
傾げたまましばらく待つと今度は頬に滴が落ちる。
「泣いてるの?」
すかした顔が少しだけ不安げに揺れた。
「違うよ。」
不安げな顔とおんなじ顔が困ったように笑う。
「ふ〜ん?でも、泣いてる。」
頬に落ちた雨粒より上から流れる琥珀の液体。
「君だって、泣いてるじゃないか。」
流れた泪を乱暴に手の甲で拭っておんなじ顔に云う。
すかしたおんなじ顔がハハッと乾いた声を漏らす。
「キミはボクだからね。当たり前さ。」
同じ動作で透明の液体を拭いながらすかした顔が云う。
「空がヤブケタのが悲しいのか?」
琥珀の泪を流したおんなじ顔が真逆と肩を竦めた。
「そんなの、嬉しいに決まってる。」
当たり前だと請け合ってコトンと世界に体を投げた。
「そんな倒れ方、いつかケガするよ?」