01/02の日記

21:31
ふたり、いっぽ
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真っ暗な空に白い光が乱反射している。

一粒の光が頬に当たって冷たさを残して消えた。

それが雪だと気付いた時、遠くから重厚な鐘の音が聞こえてきた。
ひとつ、ふたつ、鐘が響く。
少しずつ、今年も終わりが近づいていく。



「いーずみ。お待たせ」

「遅い」



振り返れば、白い息を吐き出しながら笑う浜田が片手をひらひらと振りながら歩いて来る。



「わりーわりー。来るの早いなぁ」



全く悪気もなさそうな様子に小さく息をつく。
浜田が急いで来た事は、今の時間が聞いていたバイトの終了時間から10分も経っていない事からすぐにわかった。
早く来たのは自分の勝手だ。
それは待ち切れなかったからに他ならないが、そのことを伝えるには自分には素直さが足りない。
さっさと背を向けて歩き出せば、数歩も行かないうちに追い付かれた。

ゆったりと歩く二人の間を雪が滑り落ちていく。



「なんだかんだで泉と年越すの初めてだよな」

「まぁ、中学とかは他のダチといたしな」

「なんか悔しいなぁ」

「なにが」



冷たい向かい風を受けて顔が冷えていく。
ぐるぐるに巻いたマフラーに鼻まで顔を埋めると、だってさ、と浜田が苦笑しながら呟いた。



「家族以外で俺より先に泉と年越した奴がいるなんてさ、悔しいじゃん」



一番が良かったのに、と拗ねる浜田の言葉に思わず声を失った。
寒さで色を無くした頬がだんだんと熱を帯びてくる。



「は、」



洩れた息は、言葉にならずに白い靄になって消えた。
隣を見ることが出来なくて、足元に視線を落とす。
鐘がひとつ、鳴った。
何回目の鐘かなんて、もう数えていなかったけれど、時間的には終盤に向かっているはずだ。
1年の終わりがもうそこまできている。

不意に、今年最後に素直になってもいいかもしれない、と思った。

素直になるのに最初も最後もないけど、そんな理由がないと自分は自分の背中を押せないのだから仕方ない。



「ばっかじゃねぇの、」



寒さでか、緊張でか、声が震える。

鐘の音が止んだ。

世界が無音に包まれる。まるで、二人だけが取り残されてしまったかのようだ。

息を吐くと、白い靄が立ち上って白い雪と混ざり合った。



「誰かと二人だけで過ごすのは、初めて、だし、」



早くなる口調と、早くなる鼓動。
こんなことだけで身動きが取れなくなる自分がなんだか情けなくなってくる。

無音が続く。

ゆっくりと進む歩みは、新しい年に確かに近づいている。



「そ、っか」



どこかたどたどしい言葉。
無音に響いた声に、振り向く。
そこにあったのは、嬉しそうな、照れた顔。



「なら、いーや」



へへっと笑った口元から白い息。
暗闇に溶けたその白が、なんだかすごく綺麗に思えた。



ドンッと、大きな音がした。

そのすぐ後に、真っ暗な空に光の華が咲く。

きらきらしたその光が辺りを照らす。



「あーあ、間に合わなかったな」



新しい年を告げるその華が、白い煙を空に残して消える。
すぐにまた新しい華が咲いた。



「ま、いーじゃん。来年また来れば」



当たり前のように言われた言葉には、一欠けらの不安も混じっていなくて、それが酷く嬉しかった。



「じゃー来年はバイト入れんなよ」

「りょーかい」



くすくす笑う声と白い息。
きらきら光ってここだけ明るい。



「いずみ、」



咲き乱れる光の華から目を移せば、ふんわり笑う笑顔。
その顔に見惚れてしまったのは、俺だけの秘密。



「明けましておめでとう」



ここから俺達の一年が始まる。








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オチなし意味なし
しかも超出遅れ←

改めまして。
明けましておめでとうございます。
今年も『青空と白球と。』をよろしくお願いします。

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