06/26の日記

02:02
はるうらら
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「……くしゅっ」



静かな部屋に響いたくしゃみに、今まで見ていた雑誌から顔を上げた。



「風邪?」

「んや、花粉症」



ズビー、とティッシュで鼻をかみながら、泉は苦々しい表情を浮かべた。

ティッシュが離れた鼻の頭は真っ赤に染まっていて少し痛そうだ。



「泉、花粉症だったっけ?」

「あー…、去年から」



ズズッと鼻を啜る泉の声は、当たり前のように鼻声だ。

ティッシュなくなった。と空のティッシュ箱を潰す泉に新しい箱を差し出す。



「あんまりかみすぎると鼻炎になるんじゃねぇ?」

「仕方ねーだろ」



喋りながらも鼻をかみ続ける泉はグシャグシャに丸めたティッシュを右手でごみ箱へ放り投げた。
いびつな形をしたティッシュは、それでも綺麗な弧を描いてごみ箱へスポンと落ちていった。

さすが現役野球部だ。



「今日キムチ鍋食いたい」



泉は何枚目かになるかわからないティッシュを引っ張り出しながら言った。

あまりに突然過ぎてキョトンとしていると、泉は軽くこちらを睨んでスン、と鼻を鳴らせた。



「辛いもん食べたら鼻とかスッキリしそうじゃん」

「あー」



賛同とも否定とも取れない気の抜けた声に、泉はムスッと表情を険しくさせた。

辛いものの効能を泉がどう解釈しているのかは知らないが、発汗作用がある香辛料なんかは更に鼻水なんかを垂らしてしまう気がする。
まぁ、何を食べてもそんなに違いはないような気もするが。



「材料ないなー」

「んじゃ買い物行く」

「え!?泉一人で!?」

「テメーも一緒に決まってんだろ」



誰が金出すんだよ、とさも当然のように言い放つ泉に、そうですねーといいとも張りの棒読み加減で返したら空になったティッシュ箱を投げ付けられた。

新しいティッシュ箱を泉に渡してついでにマスクはないか探してみると、少し古いが未使用のやつがあったので泉に差し出すと、泉はあからさまに嫌そうな顔をした。



「マスクしたら息出来ねー。鼻もかめねーし」

「今も鼻詰まって息出来てないだろ。花粉遮断すればちょっとはよくなるし」



そう言いくるめば、泉は渋々とマスクを付けた。
もともと小柄な泉はイコール顔も比較的小さい。そのせいか、マスクをすると顔の半分がマスクに隠れてしまい、大きな目しか見えない。



「んだよ」



花粉症のせいで少し潤んだ瞳で上目使い。
これは、何と言うか、うん。かわいい。


ズズッと鼻を啜りながら玄関へ向かう泉の背中を見て、ティッシュも買わなきゃかな、と頭の片隅で考えた今日の午後。












――――――――――

山なし
落ちなし
意味なし



ちょっと前の書きかけを書き上げたら、ただの花粉症の話になった。
時期ハズレにもほどがある。





お目汚し、失礼しました。

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