君と世界と、僕。

□第2話
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「そういや、野球部っつったけど、篠岡とかモモカンとかも来てんのか?」



ふと思い、泉は田島に聞いてみたが、田島は来てないよ、と首を横に振った。



「まぁ、モンスターとか出るもんな。女の子が来ちゃ危ないよな」

「泉ってホントに何も知らないんだな〜」

「あぁ?」



改めて驚いた、という感じで言う田島に泉は少し怒ったように反応した。
田島に言われれば誰でも同じ反応を返すかもしれないが。(三橋以外)



「だって、こっち来る時説明されなかった?」

「誰にだよ?」

「声に」

「さっきも言ってたけど、その声って何なんだ?」



意味がわからない、というふうに顔をしかめていると、田島は自分がこっちの世界に来た時のことを話始めた。
















*************






「あっれー?ここ何処だ?」



気が付いたら、真っ白な場所にいた。

見上げても、見下ろしても、境目のない真っ白な空間。思わず平衡感覚を失って倒れそうになった。実際は倒れているのかも知れないが、それすら判らない。



「うっわ〜。すげえ!宇宙にいるみてぇ!!」



田島は楽しくなってきて、荷物を肩からかけたままクロールのまね事をし始めた。



「はじめまして、田島くん」



その時だ。空間いっぱいに響くような声が聞こえたのは。



「誰だ?」



ぱたりとクロールをやめて田島は立った。すると、地面の感触が足元に現れ、突然空間に色が着いた。



「なに!?」



現れたのは、見たこともない風景だった。

何処までも続く、青い空。果てしない、緑の草原。

白に慣れてしまった目にはその鮮やかな色は眩しくて、思わず目を閉じてしまった。



「ここは、貴方がいた世界とは違う世界」



また声が聞こえて辺りを見渡して見たが、誰もいない。



「私はこの世界の創造主。そして、あなたたちを喚んだのは私です」

「喚んだ?」

「はい。貴方たちにやってもらいたい事があるのです」



そこで田島は妙だ、と思った。
何故ここには自分しかいないのに、この声はあなたたち、と複数を指している?



「私が喚んだのは、西浦高校硬式野球部部員の10人です」

「うぉっ!心読んだ!!ってか皆来てんのか〜!よかったー!」



一人じゃないということに安心して田島はホッと息をついた。



「で、俺らにして欲しいっつーのは何だ?」

「今この世界に、余計なモノが紛れ込んでいます。それを、排除してほしいのです」

「余計なモノって?」

「それは、私にもわかりません。けれど、きっとそれは貴方たちとどこかで出会う。異質なものと異質なモノは互いに引き寄せられるものだから」

「ふーん。でもさ、俺ら今週末試合があるんだ。それに毎日練習もあるし」



アンダーやマイボールが入ったスポーツバッグを叩きながら言う田島に、声は柔らかく答えた。



「この世界と貴方たちの世界の時間は違います。目的を達成することが出来たなら、貴方たちを元の世界の元の時間に戻します」

「ならいいや!」



あっけらかんと笑う田島に声は驚いたような雰囲気だったが、すぐに笑った。



「ありがとうございます。では一つ私から贈り物を。そのバッグの中を見てください」



声に従い、田島はスポーツバッグのファスナーを開けた。すると、そこには入っているはずの練習着やボールはなく、代わりに食料や水、何か液体が入ったビン。2丁の銃とそのホルダー、そして二つの赤いグローブが入っていた。



「それはこの世界で必要な道具と武器です。目を閉じて下さい」



声に言われるまま、田島は両目を閉じた。

そして、唐突に理解した。


この世界の仕組みを。



「ここで生きる為の情報です。あと一つ。ここで負った怪我はこの世界の技術で完治させることができます。ただし、致命傷……つまり、死んでしまった場合、この世界に限らず、元の世界でも死んだことになってしまいます。くれぐれも致命傷を負わないようにしてください」

「え!?それってやばくねえ!?」

「どんな世界でも、命を扱える術を持つものはいません。だからこそ、忠告をしているのです」



そこまで言って、段々声が遠くなっていることに田島は気付いた。



「私が干渉できるのはここまで。あとは、お願いします」

「え!?おい!!」

「武器の一つは、一番始めに会った仲間に渡してください。貴方がたの旅に、幸多からんことを」



そして、声は聞こえなくなった。






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