頂文。

□優しすぎる君
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なんであいつはいつも


気を遣うんだよ


心配させないため?


バッカじゃねーの!!





【優しすぎる君】





「……………は?」


「…いずみ…」



教室に入ってすぐ、泉の目の前にはクラス全員の中心にいる浜田が…傷だらけの顔でいつものバカ面を泉に向けた


「えへ☆」



キモイ……じゃねぇ!!


「おまっ!?なんだよその顔!?」



泉がづかづかと浜田の前に出ると田島が笑いながら言う


「階段でずっこけたんだと!」


「ハマちゃん!痛そう…!」



三橋は心配そうに大丈夫?と声をかけている


「階段で…ずっこけたぁ?」



そっ、言って頷く浜田にクラスの男子は笑いながら浜田ってドジだよなぁ、とからかう


しかし、泉は納得がいかない



「お前さ、本当なんだろうな?」


俯いて静かに言う泉に浜田は目を見開いた


「え…」


「嘘じゃねぇよな?」



いつもよりも格段に低い声に教室全体が沈黙した

途端に浜田を引き寄せて頬に貼ってあるガーゼのベリッと剥がす
痛そうに顔をしかめる浜田に気にも止めず


青く腫れ上がったそこはをジッと見詰めて


「ちょ…いず…痛あぁ!!」


泉を止めようとした浜田は軽く腹をゴツかれ、悲痛の声を上げた


「どう見ても階段でこうなるかよ!?全身打撲だからけじゃねぇか!?」


確かに、階段で転けたには打撲の箇所が多すぎる

教室がざわつきはじめると浜田はよろけながらみんなに笑顔を向けた



「大丈夫だよ、大した怪我じゃないんだし」


そんな浜田に泉はまた怒鳴ろうとすると…



「浜田…もういいよ」


「矢野…」


クラスメイトの一人が話し始める



「浜田さ、不良に絡まれそうになった俺の代わりに殴られたんだよ、ごめん」


頭を下げる矢野に浜田は慌てた


「ちげぇって!あれは俺が好きでやったんだからよ?な?」


矢野の肩に手を乗せて、頭を上げてくれと困ったように笑う


「でも…俺、止めならなかった…」



悔しそうに唇を噛む矢野に浜田は笑う


「その気持ちだけで充分なんだよ」




クラスメイト全員は浜田に拍手をした












不機嫌丸出しの泉に浜田は困った、肩を竦める


「泉さーん」


「…………」



応答なしに浜田は溜め息を吐いてジュース奢ってやるよ、と教室を出て行った


そんな浜田と泉を交互に見ていた田島と三橋


「でもさぁ、浜田いいことしたじゃん」


田島はなっ?と三橋に同意を求めるとコクコクと頷く


それにピクリと反応する泉に三橋震えた



「浜田のこと、許してやれよ」


田島の一言に泉は勢いで立ち上がり、それにクラスメイトたちも注目する


「浜田のこと甘やかすな」


静かに、強くはっきりと話す泉


「あいつは、なんでも抱え込もうとする だから…嘘だけはついて欲しくねぇんだよ…」



廊下でそれを聞いてしまった浜田はそっと泉を見た



その瞳は酷く寂しそうで


持っていた缶ジュースを握り締めた











帰り道、浜田が自転車を持って部活帰りの泉の前に立っていた


「今日のお詫び」


「……あたりまえだ」



と睨む泉に浜田は苦笑する


「泉、今日はさ…痛ッ!!」


言いかけた言葉は泉に背中を叩かれて消えた



「もう二度と嘘つくなバカ浜田」



そう言って 自転車の後ろに跨ろうとする泉を背中から抱き寄せた


「いずみ…もう、絶対嘘つかないから」



背後にあるぬくもりとその言葉に、泉はふっと微笑んだ


「だから…あまりまえなんだよ、バーカ」




浜田はきっと


もう二度と俺に嘘をつかない…



だって、お前は優しすぎるから







END




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