君と世界と、僕。
□第1話
1ページ/3ページ
「あれ……?ここ、何処だ?」
泉は、痛む頭を押さえて上半身を起こした。
いつの間にか気を失っていたのだろうか。意識を失う前の記憶がない。
「俺、教室に向かってたはず…」
キョロキョロと辺りを見渡してみても、教室どころか、建物一つ見当たらない。見渡す限り草原が続いている。
「うっわ。地平線とか初めて見た」
日本にいる限りまず見ることはないだろう地平線に、泉は無意識のうちにそう呟いた。
「って、そうじゃねぇ。……俺、どうなったんだ?」
朝練が終わった後、教室に向かうために田島と三橋と共に校舎に向かっていたことは覚えている。
校舎に入る前、ちょうど登校してきた浜田と合流して、4人で階段を上っていたはずだ。
しかし、そこから記憶がない。
もしかして、階段から落ちて気を失ったのか、とも思ったが、落ちた記憶はないし、なによりこんな所で寝ているわけがない。
保健室のベットで目を覚ますならまだしも、なぜ草原?非現実的すぎだ。
「で、なんで俺一人なんだよ…」
だだっ広い草原にポツンと一人。
一体ほかの3人は何処へ行ってしまったのだろうか。
「………もういっそ、夢オチになんねぇかな…」
あまりにも常識の範囲を越えた事態に、泉はどこか遠くを見出した。
「いっずみー!!!」
すると、何処からともなく聞き慣れた声が聞こえて来た。
声がした方向を見てみると、ピョンピョンとまるでウサギのように跳びはねながら田島が駆け寄って来ているのが視界に入って来た。
知っている顔を見て、泉はホッと肩の力を抜いた。
田島がいるなら、近くに三橋や浜田もいるかもしれない。
そう考えると、酷く安心し、今まで自分がどれほど緊張していたのかが改めてわかった。
「泉!おー!!やっぱり泉だぁ!よかったー!俺一人じゃなかった!」
「ぐぇっ!」
凄い勢いで走ってきた田島に体当たりで抱き着かれ、泉は一瞬喉を詰まらせた。
「いってぇよ!田島!!」
ゴホゴホと咳込みながら泉は田島を引っぺがした。
一方田島は全く悪びれた風もなく、手を頭の後ろで組みニコニコ笑っている。
「だってよ〜、一人じゃなくて嬉しかったんだもん!」
大家族の田島は、一人でいることに慣れていない。そして、高校の志望動機にもなった例の置いてけぼり事件によってその兆候は一段と強まったのだろう。
それを知っているだけに、泉はそれ以上田島に対して怒鳴ることはしなかった。
「で、この辺りは一通り見たのか?」
泉を見つけるまでウロウロしていたらしい田島に、この辺りの状況を尋ねる。
「おぅ!特に何もなかったよ!ずーっと草っぱら!」
「じゃあ、この辺りには俺達以外いねぇのか」
あまりうれしくはないその状況に、泉は溜息をついた。
「そういや、なんで俺達がここにいるのかわかるか?」
ふと思って、泉は田島に聞いた。すると田島はきょとん、とした顔で首を傾げた。
「え?喚ばれたからじゃん」
「…………は?」
さも当たり前です、とでも言うように田島は答えたが、泉にはさっぱりわからない。
「あれ?泉知らねぇの?これ、ゲームじゃん」
「はぁ?ゲーム?」
「うん。俺達は、プレイヤー」
一体何がどうなっているのか、泉には全く理解できなかった。