月虹群雲、乱れて候。
□5章
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グラファイトとのやり取りから、もう数日が経とうとしていた。
あれからも相変わらず、ヴァーグは不満そうなままだ。
付き纏うのも何時殺されるのも了承してるって言うのに、なんとも失礼な話だ。
「なぁ、ヴァーグ?」
「何ぞ」
「焦げる」
むぅ、と今しがた気付いた様に、焚き火に近づきすぎていた外套を離す。
一つ一つの動作が緩慢というのか……何だか酷く考え込んでいる様である。
流石に笑えはしないが、一度は洵からも落ち掛けたことだし、いよいよ一度聞いて置くべきなのかもしれない。
聞いた所でお前に話す事等無い、といわれてしまえばそれまでだが。
「なぁ、ヴァーグ?」
「今度は何ぞ!」
「怒るなよ、聞いただけだろ」
「……何ぞ」
あくまでも不機嫌そうな声を崩そうとしない。
崩さなくていいか、無理矢理に聞いてしまえば。