月虹群雲、乱れて候。

□1章
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「っ! ヴァーグ!!」

ヴァーグ―――ヴァーガンディーが木を薙ぎ倒そうとするのを、オレは慌てて止めに入った。

ヴァーガンディーは長いから、お前とか魔属とか呼んでいたら、ヴァーグと呼べといわれたのだ。

別に反抗する理由もないし、大人しくそう呼んでいるけれど。

「木を素手で倒すのは不味いだろ!?」

「この先に進みたいんじゃないのか?」

「それとこれとは別っ。ちゃんとした橋が出来るまでさっきの村に居ればいいし」

目の前には、轟々と音を立てる濁流。

数日降り続いた雨によって、川に掛けられていた橋が流れてしまったのだ。

その話は村で聞いていたし、歩いて渡れそうなら渡ろう、とだけ思い、オレは此処まで来た。

しかし何故か、ヴァーグはそれで納得しない。

近くの木を折って無理矢理橋渡しにしようとして、上記にいたる、と。

「……あの村は嫌だ」

「じゃー判った、オレは行くからお前は別の所に行けよ」

「嫌だ」

がし、と腕を捕まれ、歩きだそうとした所を止められる。

オレはむっ、と眉を寄せた。

付きまとわれて1週間ほどになるが、全く彼の性格が掴めない。理解できない、と言うべきか。
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