月虹群雲、乱れて候。
□終章
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壊すのも魔属なら、作るのも魔属なのだと、俺は初めて知った。
当たり前に使っていた精霊を用いる技術も、元はと言えば魔属の作り出した技術らしい。
言うなれば、人間はその恩恵にあやかっていただけなのだ。
目の前に出来上がっていく巨大な都市を見上げながら、俺は感嘆の吐息を漏らした。
「どうした、弥栄?」
「……いや、魔属という存在の万能性について思い知ってた」
「今更であろうに」
俺の半ば呆然とした呟きを笑い飛ばし、彼は美しく彫刻された椅子に腰掛ける。
それは先方、彼自身が指一つ鳴らして作り上げたものだ。
どうも無から作り出して居るわけではなく、空気中に漂っている塵や細かな粒子を集めて固めたモノらしいが……それを一瞬で可能にするだけの技術が恐ろしい。
……だからなのだろうか。
だから、人間は魔属と言うものを本能的に畏れたのだろうか。
本当に、できないことが無いのだ。
魔属の国が出来る、と決まってから、俺の衣食住はほぼ魔属頼りだった。食事の準備や何やまで好んでしたがる魔属が居るのである。個人の自由なので別に構わないだろうが……
俺が魔属の国の代価だと魔属中が知って居る為、其処に居るのは当然と見逃されている。
国が出来ると決まって、まだ3日。