あるりたっ。
□3章
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機密保持に必要なこと。
やはり個人の性格にも寄るだろうが、オレにとっては目立たないこと、だと思う。
例えば非常に重要な事実を誰かに預けるなら?
またもしくはそれを隠し続けなければいけないとしたら?
目立つ人間は、常に人の目に晒されている。
少なくとも、そんな人間に機密を預ける・または機密を隠す、とは考えにくい。
逆にスパイする側からすれば、目立たない人間ほど機密を持っている可能性が高い、という寸法だ。
そして勿論、オレが機密を得た場合も目立たないことを前提に行動する。
得た機密を姉さんに話してしまえば、もう疚しいことは無い訳だから堂々としていられる筈。
姉さんからスパイとして誰を狙うか、そして自分が機密を手に入れたときにどうするかと聞かれた時に答えた内容だ。
その答えにある程度自信もあるし、スパイとしての自負もある。
その考えに従って行動する場合、スパイなら誰を狙うべきか。
オレの個人的見解では、目立つ癖に印象に残らない、つまり目の前に居るおにーさんが怪しいと思うわけだ。
「……つまり、理事庶務を?」
「えーまぁ理事庶務を」
理事長は素っ頓狂な事を聞いた、と言わんばかりの表情で此方を見た。