いつから君が俺の全てになっただろう
いつから君なしでは生きていけなくなっただろう
遡れば遡るほど君の笑顔が眩しく感じて、同時にその輝きの中に君の輪郭が消えて行く
嫌だ
消えるな
伸ばしたって、手は届かない
分かっているのに手を伸ばす衝動を抑えきれない
触れたいのに触れられない
君が、俺の中で霞んで、消えていこうとする
駄目だ
消えるな
あの笑顔が、声が、記憶が
霞んで、見えなくなる
嫌だ
駄目だ
叫んだって、伸ばしたって、届かない
届かない
何もかも
嘘だ
嘘だ
信じない
俺は
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ぐんと圧し掛かるような感覚に目を見開いた。
酷く呼吸がしにくい。耳にこびり付きそうな心拍と呼吸音を雑音に、視界に広がる天井を唖然と見つめた。
そして片隅で理解する。
「……ゆめ」
それが現実のものではなかった。そう安堵したいのに、頭の中が黒い何かで塗りたくられていく。思い出したくないのに、溶けてなくなっていくような、あの感覚だけが妙にリアルに体の中に残る。
それを振り払うかのように勢いよく上体を起こした。
未だにはびこる。それをどうにも取り払う事が出来なくて、ただギシリと音が鳴るほど奥歯を噛み締めた。
「……くそっ」
どうしたらいい。どうしたら、君は俺のところにかえってきてくれる。
落とした視線の先に、硬く握りしめられた自身の手が映った。
何でもした。可能性があるなら何でも試した。
君が見つかるならと地位を欲した。
君を手に出来るならと力を欲した。
君に繋がる事なら何でもしてきた。
それでも、君はまだ。
「……運命ってものがあるなら」
幼き日に結んだ小さな指。
それが今なお生き続けているというなら。
「俺を引き合わせてくれよ」
どうかこの糸の先が君である事を。
赤い糸
戦場の青い鳥 -綱吉-