あの空の向こうに

□05 指
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私は僚機の白沢と共に離陸モンゴルとの国境を目指す。
離陸し、高度を上げると警告音と共に計基盤のレーダー受信警戒装置に反応が出る。
北側からの反応。モンゴル側の地上レーダーの物だ。
まっ平らな砂漠地帯なだけはあり、飛行中は低空飛行しない限り、モンゴル側に監視されている。余り愉快な物では無いが、こちらも代々条件は同じだ。

任務は国境周辺の哨戒飛行、国境にそって飛行するコースであり、哨戒という名の挑発であり、向こうも国境すれすれに戦闘機を送って来る可能性がある任務だ。間違って国境を越え、領空侵犯した場合、相手は交戦するだろうし、私も交戦する。
だだ侵犯しなければ、モンゴルとは交戦していないので、向こうのパイロットと写真を取り合ったり、手を振りあったりと国境越しの交流が出来る緊張感が有るのか無いのか良く分からない変な任務だ。

ゆっくりと機体をコースに乗せる。もうすぐ国境だ。この任務は慣れたもので以外と冷静だ。
眼下は一面の黄土色、空はやや雲があるが見渡すような青
『12、4時下方2機。シュトルモビクか?高度が低い。』
白沢中尉が焦りと緊張を含んだ声で言う。
私もその方向を注視する。 距離20キロをごく低空で土煙りを巻き上げた嘗める様に飛行している。高度は十メートル程だろうか?低い
『15より、我が機より東南に20キロ、北に向けて飛行、低空を飛行している航空機2機を目視、この機の特定求む。』
私は管制に無線連絡。敵機ならば直ぐに迎撃指示か出るだろう。全身に緊張が走り、心臓が高鳴り始める。
無意識に左手がスロットルから放れ、火器管制装置の安全装置トグル伸びる。
しばらくの沈黙の後に、管制からの無線、
『あの機は味方海軍機だ。繰り返す味方海軍機だ。』
との返答、ほっと息を吐き、左手をスロットルに戻し、送信ボタンを2回押す。

『味方か。良かった。』
と白沢がため息混じりに言う。 『全くだ。海軍め迷惑な連中だ。』
と私は返す。緊張感が少し溶ける。
『随分と低空で、訓練かな。』
と白沢が言う。確かに戦闘機ならあの高度は優位が無いのでまず飛ばない。だが海軍は攻撃機を派遣しているので低空を飛んでもおかしくは無い。

『あぁそうで合って欲しいな。』
と私は砂塵を巻き上げ飛んでいく海軍機を見つめながら返す。
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