私の小さな世界について

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1980年、モンゴル砂漠地帯、私達6人は砂漠の丘陵の狭い窪地に潜伏していた。今は休息中で、半径5メートル程の窪地に私を含めて2人しかしない。
他の4人の内2人は周囲の警戒、残った2人はここから100m程の窪地に設置した観測地点で偵察をしている。


私は手首側に着けた腕時計の文字盤を確認する。時刻は12時、私は背嚢から昼食分の糧食を取り出す。缶詰にされた牛肉の大和煮と麦飯、沢庵だ。となりにいる佐山勝也軍曹も糧食を背嚢から取り出している。
「大和煮かいいな。」
と佐山がいう。彼の手にはハムソーセージとあだ名されるひき肉料理の缶詰が握られている。
「変えないぞ。アカ野郎には勿体ない。」
と私は言う。アカ野郎は彼のあだ名だ。我々の国、日本人民共和国は市場解放はしたもの建前上は共産主義だ。
アカ野郎にはつまり彼は根っからの共産主義者、ではない。ただ何でもケチャップをかけたがる味覚異常者だからアカ野郎なのだ。

「3食続けてソーセージなんだ。変えてくれよいいだろ。」
と佐山はいう。
「背嚢に詰めるとき何でもいいと言ったじゃないか。」
と私は言い、十徳ナイフで缶詰を開けていく。
13時からは観測地点での偵察につかないといけない。腹ごしらえは早く済ませたい。
私は牛肉の大和煮に橋ををつける。
冷えているが甘辛く煮えた牛肉が上手い。
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