あの空の向こうに

□03 砂
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『―レーダー誘導を終える。後は目視にて着陸せよ。』
レーダー管制から無線が終わる。
「ペガサス34了解」
と私は答える。今日は砂嵐も無く、視界は良好。
そして素早く計器を見る。速度、脚が出ているか、フラップは着陸位置か、すぐに制動傘が出せるかなどを確認。電波による誘導も水平姿勢器に綺麗な十字が出ており侵入は順調である。

「ペガサス22 確認は完了だ。29どうだ。」
と私は僚機の白沢中尉に問う。
『29問題有りません。』
という返事が帰ってくる。
私は了解と答え、後は照準機の向こうに見える細長い台形の形をした滑走路に滑り込むだけだ。

着地し、脚のブレーキを掛け、制動傘を展開する。着地が成功しほっと一息つく。後は停止点まで行き機付き長に機を引き渡すだけだ。
明日からは休暇だ。
基地から南に15キロにある休暇村に小隊ごとに行くのが、ここにいる隊員の主な休暇の過ごし方で、娼館からカフェ、飲み屋、雑貨屋まで休日を潰すのには最適な場所だ。
基本的に行き来は小隊ごとで泊まりから日帰りまで楽しめる場所だ。

エンジンを切り、風防を開けると砂漠の熱風が操縦室内に流れ混んで来る。酸素マスクを外し、ヘルメットをとりハーネスを外しにかかる。
整備員が梯子を取り付け操縦室まで登ってくる。
「お疲れ様です。訓練はいかがでした?」
と整備員は敬礼し、ハーネスを外す手伝いに掛かりながら言う。
「まあいつも通りだよ。」
と私は返す。
「それにしても今日は荒れてなくて良かったですね。砂嵐だと整備も大変で、ここの砂はまるで小麦粉みたいですから、色々な所からすぐに入って来ます。」
と困ったような微笑を浮かべる。
私がハーネスを外し終わると整備員は先に梯子を降りる。
「随分と苦労している様だな。」
と私は言う。

「ええ本当に大変で、この前なんか―」
地に足がついてもこの整備員はしゃべり続けている。饒舌な奴だなと思った。

機付長に敬礼し機体を引き渡し、白沢と合流し隊舎に向かって歩き始める。西日が強くなって来た。もうすぐ日が落ちる。
ここの夕日は綺麗ということ思い出した。地平線に沈む夕日はとてつもなく綺麗で日本では見れない光景だった。
 

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