Long

□宇宙の端っこ
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お父さん、お母さん、

初めての宇宙はとても大きかったです。


こんなにたくさん星があるんだから、お母さん達もきっと居るんだよね?
どうか、私がわかるように光っていてください。




「どうした?」

はっ、と気が付けば目の前のロックオンと目があった。
そうだった、ここは確か新幹線・・・じゃなくってリニアの中だ。
アナウンスが聞こえ、耳を傾ければもう少しで出発する、との事。



「んと・・・別になんでも」

急いで笑顔を作ってみたけど、大丈夫だよね?
初めての宇宙に戸惑ってる、そう解釈してくれたのかアレルヤもロックオンも大丈夫だ、といってくれた。
もちろん宇宙にいけるなんてここに来る前は思っても見なかったことなんだけどね。
・・・と、思いのほかテンションがシリアスになってしまったのでどうにかするべく車両内?を見渡してみる。
流石300年経つとやっぱり違うもんで、こういうのを見てるとちょっとわくわくする。


宇宙。

それは私にとってトラウマにも等しいものだった。
もちろん科学者としての興味はあるし、こうして宇宙に行けるようになったことも素晴らしいと思う。
けれどどうしても宇宙という場所・・・というか存在自体が私を悩ませた。
宇宙なんて・・・なければいいのに。



体が浮き、無重力下に入ったことが確認されシートベルトの支持が消えた。
ベルトを外すとやはり体は浮いて、これはこれで楽しいと思うし。
けど、このままここにいてもみんなにいつ不安がばれるか分かったもんじゃない。
私は顔に出やすい、とこの間ロックオンに言われたばかりなのだ。




「ちょっと散歩してくるね」

そう言って部屋から出る。
アレルヤは付いていこうか?と言ってくれたけど遠慮して。
ティエリアは迷子になってもらうと困る、と睨まれ。(だからきっとうろうろするなって意味だよね)
刹那は気をつけろ、ってそれだけ。(それでも嬉しい)
けど疑問に思ったのはロックオンが何も言わなかったってことだった。
きっとロックオンは真っ先に母親的な何か(もしくはお兄ちゃん的なこと)を言ってくると思ってたのに。

そんなみんなの言葉を受けながら部屋を出て、ふぅ、と息を付いた。
そして少しリニアの中を見て回ると寛げるような場所が設けてあるのを見つけて、取り合えずそこに入る。
中には誰もいなくて、ひとりになりたかった私にはありがたかった。




「なんであたしここにいるんだろう・・・」



窓の外にある真っ黒な宇宙をみて、溜息を1つ付いた。
そしてポツリと呟いた自分の声に、じわりと涙が浮かんでくる。
さすが無重力と言うところか、溜まった涙は地に落ちることなくこの空間の中を彷徨った。


過去の世界に未練はない、って言えばウソになる。
だけど学校にも、家にも私の居場所はなかった。
唯一の私の居場所は研究所、それも私のラボだけだったから。
しかも未練って言ったらやりかけの研究くらいで、そんなものこっちのほうがはかどるだろうし。

戸惑ってるのかもしれない、そう思った。
こんなに楽しくていいのだろうか、こんなに幸せでいいのだろうか。
優しい仲間に囲まれて毎日笑顔でいられて。
大袈裟だと思う?
だって実際こんなに誰かと笑う環境は、きっとパパとママが死んで以来だったから。
でも、いつかはこの関係がなくなってしまうでしょう?
そうしたら私はまた独りぼっちで。





やっぱり、宇宙なんて嫌いだ。
自分の存在がなかったもののように大きすぎるから。





宇宙の端っこ
(誰も私に気付いてくれないの)








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