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□さよなら、
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私は、


「刹那・・・・・・・」


まだ、


「ごめんなさい」


貴方を愛しても、




「・・・・・・っ、死ねえええっ!!」



いいのでしょうか。






愛しています。世界中の誰よりも。
私達は何も間違っちゃ居なかったの、私も、貴方も。
貴方は世界を変えたかった、私はみんなを守りたかった。
ただ、それだけだったのにね。


ガチャ、
2つの銃が構えられる音が、この薄暗い廃墟に響く。
目の前には愛しい刹那の姿。だけれど彼のその手には銃が、一丁。
廃墟の外の音は何も聞こえなかった。
本当は醜い紛争があっているのに、ここはまるで何事もないように。



「・・・刹那、どうして」


ゾッとするほど私の声が虚しく響いた。

どうして、私達は出会ったのかしら。
どうして、愛し合ってしまったのかしら。
どうして、私達は敵同士なのかしら。
どうして、神様はこんな運命を作ったの?
どうして、こんなに尋ねても答えは返ってこないのかしら。

ああ、神様は居ないからか。

涙がとめどなく溢れて目前が歪む。
撃ちたくない、撃ちたくなんかない、だけど死にたいわけでもないの。
貴方は世界を変えたいと願った、けれど私の守りたいものを壊して世界を変えるのでしょう?
それならば、私は貴方に銃口を向けなければならないのです。



「刹那、ガンダムに乗り続けるのね?」

刹那はゆっくりと頷いた。武力介入は止めない、と。
私の答えは決まった、迷う必要はないもの。



「ならば「俺を撃て」・・・え?」


撃て?何を言ってるのよ。
刹那の銃が床に転がる。本気で撃たれる気なんだ。
なにを戸惑う必要があるのよ、これでいいんじゃない。
刹那を撃てばソレスタル・ビーイングは崩れる。
私の守りたいものはみんな無事に生きることが出来る。(だったらなぜ)(こんなにも手が震えるの?)

愛した赤い瞳が私を捉える。幾度も羨ましいと思った、あの赤い瞳で。
自分の意思を曲げない、あのまっすぐな瞳は刹那だからこそだと、私は思っていた。





「撃てるわけ、・・・・ないじゃない」



守りたいもの。それは刹那のことでもあるの。刹那を失ってまで守りたい世界ではない。
私が守りたかったのは、私自身だ。
驚いた顔がやがて微笑みに変わった。ああ、この顔が大好きなんだ。



「勘違いしないで、戦意がない奴を殺す気がないだけよ」


私はきっと、謀反罪で裁かれるであろう。私が守っていたものに。
銃を下ろして、刹那に背を向け歩き出す。
背後からは愛しい刹那が私の名を呼んでいる、その声さえも。(心臓に刻み込んで)




「さよなら」


小さく呟いた声は、きっと刹那には聞こえないであろう。
これがどうか永遠の別れでありますように。
この涙が貴方の心臓に刻まれればいいのに。(永遠に一緒に居られたのに)






運命を呪った日
(神様なんていやしないのよ)









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