夢ゆめ
□耳に残るは君の歌声
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森を抜けると見晴らしのよい草花の群生地に出た。
森の中と違って陽がおしみなく降り注ぐ。
緩やかな斜面となっている方を見ると、少女が歌っている。風向きのせいかとぎれとぎれに聞こえる。よく見ようと手で目元に影をつくる。
座っている少女の膝には誰かが頭をのせているようで、空に向かって歌っている彼女の手が頭を撫でるような仕種をしている。
表情が見える程近いわけではないのにその歌声に含まれる優しさのせいか膝枕をしている相手を思う気持ちが伝わってくる。
その場を離れた行商人は、少女の歌う聞き覚えのないけれど懐かしさを含む旋律を繰り返し忘れぬように口ずさむ。