09/28の日記

22:41
ふたりぼっちの救難ボート
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海上に一つ、救難ボートが浮かんでいた。
ボートでは少年と少女が互いの肩に顔をうずめている。
「大丈夫だ、傍にいる」
少年は少女を励ますが、自分も不安の中にいた。
少女を失う、不安の中に。
二人とも飢えていた。
空腹なのではない。
水でも食糧でもない何かに二人は飢えていた。
その飢えは直接生死に関わるものではない。
しかし胸を締め付け、心細い思いにさせるそれは生きる上での気力にに影響しそうなほどひどいものだった。
少女は顔を上げた。
その目には涙を溜めている。
「お願い。私のこと置いていかないで」
「どこにも行きようがねぇよ」
「あるよ」
少女は上を指差した。
その先はカモメが飛び交う青空だった。
少女が指差したのは天、だ。
少年は考えたくなかったことだった。
己れの背に冷や汗がつたう。
やっとの思いで声を絞り出した。
「……お前こそ」
「うん。ずっと一緒だよね」
「……あぁ」

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