長編小説 アシュ×千尋
□女王の務め
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「おはようございます。二の姫。」
ゆったりとした笑みを浮かべ、狭井君が部屋に現れた。
昨夜の手紙で幾分気持ちが落ち着いているので、千尋も笑顔で出迎える。
おや?訝しげに思いつつも歴戦の政治駆け引きを行ってきた老女の
感情は柔和な顔に隠される。
「本日はお願いがございまして参上いたしました。」
「何ですか?」
老女の静かな威圧感に千尋の背筋も自然と伸びる。
「二の姫は嫁がれたとはいえ、この中つ国の女王でもございます。
女王不在で政を行うのもいささかこの老体には荷が重く、よろしければお戻りになられている間だけでも皆の前で職務を果たしてはいただけませんでしょうか。」
常世にいるときも、書状等で職責は果たしてきてはいたが、確かに彼女の言うことにも一理ある。
いや、もっともすぎて、仰るとおりとしか言えない。
なすべきことをなせ・・とアシュヴィンにも言われていたし。
千尋は二つ返事で快諾した。
では、本日午後より会議を行いますので、ご参加を。
そういい残し、狭井君は部屋を辞した。