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□貴方が生まれたこの日に
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雨がしとしと降る中、彼はソファーに座ってボーッとしている。
─今日は骸様の誕生日…──
自分の最も大切な人の誕生日。
だから精一杯心から祝って、出来るだけ喜んでもらいたい。
だが自分の所持金はとても少なく、高価な物を買う事も豪華なご馳走を用意する事も出来ない。
だから物は安価な物に、そして私は心からお祝いしよう、と思った。
「あの、骸様…。」
「どうしました、クローム。」
彼はいつも通りの優しい表情で見てきた。
「お誕生日、おめでとうございます。」
そう言って頭を下げながらプレゼントを渡す。
彼がどんな表情かも分からないまま、返事を待つ。
喜んでもらえなかったら、どうしよう…。
そんな不安が胸を締め付ける。
「薔薇、ですね。」
彼はいつもの口調で言った。
「は…い、……骸様に似合うと思って。」
彼は一瞬だけ驚いた表情をして、また笑う。
そして両手で優しく抱き締められた。
「有り難うございます、クローム。」
嗚呼、骸様。
生まれて来てくれて、有り難う。
貴方が生まれたこの日に
(感謝します)