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□何度でも巻き戻して
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(クローム視点)











今、自分の最も愛する彼が自分の前で微笑んでいる。

その寂しげな顔で笑う彼の手は私の首を掴んでいた。
私は壁に押し付けられ、首を少しの力で締められている。




「む・・・くろ・・さま・・?」


首を締められているせいか、恐怖のせいか上手く声が出ない。

呼びかけても返事は返らず、未だ微笑んでいる。



私の首を締めている綺麗な彼の手は大きく、細く、冷たい。

どうしてこの手に締められているのか。



私はこのまま殺されるのか。






「─・・骸様・・なんで・・・」


細い声で問い掛ければ、初めて彼は口を開いた。







「・・・君が、憎いからです。」


「・・・・・・。」



「・・・君が・・大嫌いだ、だから殺す、・・それだけの事ですよ。」




やっと状況を理解する。

やはり骸様は、私をこのまま殺そうとしている。








「・・じゃあ、早く私を・・殺して下さい。」



「・・・・・・・。」



「骸様の・・・辛そうな顔、見たく、ない。」




「・・・・っ・・。」




彼は穏やかな表情をしていても、全く矛盾している彼の感情が自分には分かる。







「・・・殺して、ください。」



そう言った瞬間、彼の手の力が強くなった。






息が出来ない程に。





あぁ、本当に殺されるんだ、と思った。


苦しい、とか、まだ死にたくない、なんて思わなかった。






今正に自分を殺そうとしている彼を見上げると、彼は微笑んでいた。



でもその瞳は、





泣いていた。







自分の服を濡らす程。




「むく・・・さ・・ま。」


殆ど声が出ない自分の声を振り絞り、僅かな声を出す。





「泣・・・か・・・ないで・・。」




「っ・・どうしてお前はっ・・」


段々意識が遠くなる。





最後に、私は彼に微笑んだ。







「愛してます・・・。」















そこで意識は無くなり、暗闇が広がる。


・・これで・・・骸様は楽になれたのか。


互いの苦しい感情から解放されたのか。



骸様がこれで良かったのなら、これで良いと思った。




最期が最愛の人で、私も満足だから。



・・・これも全て"運命"。





生まれ変わっても、きっと貴方に出逢い、きっと貴方を愛します。









何度でも巻き戻して









(それは古いフィルムのように)
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