なるようにしかならない
□閑話 〜別名無駄話〜
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「あ、今日13日の金曜日じゃん。」
携帯電話の画面を見て呟いた真祢の一人言に、キンヨウビ?と聞きなれない単語を繰り返してフレイムが首を傾げる。
何やら楽しそうな様子である真祢を見て、何かの記念日か?と彼は疑問をそのまま口に出す。
それににっこりと笑い返した彼女は、やはり楽しげに。
「んーん。不吉な日って言われてるよー。」
それをばっさりと否定してのけた。
「は?」
「何だったかなー、あ!ジェイソン?」
「はあ?」
何を言っているのか意味が分からないらしく、こてんと首を更に傾けた。
その反応に対し、どう説明したものかと真祢はしばし考え。
「まあ諸説あるんだけどね?キリス……神の子とか呼ばれた人が処刑された日だとかどっかの国で事故が起こりやすい日だとか。」
でもそん中で有名なのがジェイソンかなーと、思い出すように宙に視線を投げて人差し指を天井に向けてくるくると回す仕草をする。
説明を促すようにふんふん。と頷いて口を挟まないフレイムに、更に詳しいジェイソンの説明をするために真祢は再び宙からフレイムへと視線を戻す。
「何だったかなあ。映画……、娯楽の一つで、実際には無い架空の物語とかを映像……動く絵みたいなのにして提供するんだけど、それに出てくるんだ。題名も『13日の金曜日』って言ってね。」
チェーンソーを持った男が人を殺していくという内容を真祢の持てる語彙力(ごいりょく)をフルで使って、彼女ができうる限り相手が怖がるように話し尽くした。
途中からフレイムは怪談の一種であることは見当がついていたが、丁度今ここに二人以外に誰もいない上、真祢が一生懸命に話しているので話の腰を折る事も出来ず律儀に最後まで聞いていた。
それはもうしっかりと。
そしてジェイソンがどんなものかもしっかり理解した。
そのせいで"13日の金曜日"が不吉なイメージを持つのも、何やら不吉なのにその具体性が無くやたらとわくわくするとかいうのも分かった。が、
「…………キンヨウビって何だ?」
素朴かつそれ以外の疑問が無かった故の質問だったのだが、今までジェイソンに対して熱弁をふるっていた真祢にそれが伝わる訳もなく。
話を聞いていなかったのかとテンションが一気に落ちた真祢ががっくりしながらそれでも曜日の説明をする。
そして何故真祢が気落ちしたのかが分からないフレイムが焦るのだが、二人だけしかいないのでしばらくその気まずいような慌てたような空気が払拭されるのは当分先なのだった。
「どうしたフレイム。尻尾が垂れているが何かあったのか?」
「あぁ?…ウェルか。何つーかさあ、俺ちょい……ヘコんだ。」
end
本当はジェイソンとか来ないよな?とビビらせたかったんですが何やら軌道が逸れました。
でも結局いい目は見れない可哀想なフレイム。
意志疎通には言葉が不可欠なんですよー。