ときめきバグりある!1st trip

□7・あんまり巧いとどっちがモノマネされてる方かわからなくなる。
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 数時間後、わたしは固い決意を胸にここに立っている。

 寄せては返す波音
 ぼんやりと白んできた東の空
 岬に立つ灯台
 目の前にあるのは、喫茶珊瑚礁  


「本物……だよね?」
 思わず呟く。
 遠めで見たときは感動して涙が出るくらいだったけど、こうして目の前に実物大で存在しているとかえってリアリティがない。
 もちろん建物としては本物だし、細部に目をやると確かに珊瑚礁なんだけど
 今まで何度も見てきたそれは、あくまでも机上の、画面上の、デザイン設定としての珊瑚礁。

「なんか……違和感〜」
 なんてありがたみのない罰当たりな感想を抱きながら二階の窓を見上げていると
 からん、とドアベルの音がして扉が開いた。


「……げ。」
「げ?……ってぎゃああああ!!」

 特に意識せずに目線を下げて、不意打ちのようにそれを視界に映したわたしは、思わず大声をあげて目を見開く。

 瑛だ!!佐伯 瑛!!

「……すげぇ悲鳴……」
 わたしほどではないものの、驚いて呆気にとられていた目の前のリアル瑛が、さすがに速攻立ち直って作り笑顔を浮かべる。
 もしかしてこの流れはOPの……

「……うちの店になにかご用ですか?」
 うわっ!マジ言った!猫かぶった!つかさっきの「げ。」ももう一回聞きなおしたい!!
 設定どおりのセリフに思わず盛り上がる内心を隠し、わたしはあわてて返す言葉を考える。
 流れで行けば『わたし、道に迷っちゃって……』だ。だけどわたしがそう答えても、この後の入学式の出会いはない。
 時間軸がひどく曖昧なんだと遊くんが言ってたんだ。
 う〜ん、難しいなぁ……どっかに三択出てないのかなぁ。

「……なにか?」
「あ、えと」
 ウィンドゥを探してキョロキョロしていると、笑顔を引きつらせた瑛が痺れを切らしたように答えを促してくる。
 仕方なくわたしは正直に答える。
「わたし、人生に迷っちゃって」「だから?」
「うわ、印象××だった。」
 なんであんなこと言っちゃったんだろうバカバカー印象サイアクだよ〜などと、棒読みで思っていると、瑛ははっとしたように灯台を振り返る。

「な、もしかしてこの岬から投身自殺とか考えてるんじゃないだろうな!?」
「え、いや特にそういうわけじゃ」
「やめろ。ゼッタイやめろ。今すぐ帰れ!
 そんなことされてこの灯台が自殺の名所なんてことにでもなったら……」
 ……そうだよね。この灯台は瑛とデイジーの大切な思い出の
「店の売り上げに被害が出る!」
「うんやっぱそっちだよね。さし当たっては。」
「しかも化けて出たりして心霊スポットなんてことにでもなったら……俺はどうすれば!?」
「それは逆に集客率が上がるかもしれないよ。」
「………無理!そんなところに住めるか!」
 ちょっと考えたな。
「とにかく、ゼッタイだめだ!死ぬならどっかよそでやれ!」
 すっかり素に戻った瑛が、かなり人でなしなセリフを吐く。
「ん〜……じゃあとりあえず夜明けの珊瑚礁ブレンドを一杯。」
「……やっぱ客だったのかよ。」
「あ、違うよ一見さんだから気にしないで?猫かぶってるのも黙っててあげるから。」
 しまった、と呟いてかっこいい顔を歪める瑛に、わたしは嗜虐心をくすぐられながらも一応フォローは入れておく。
 瑛はそんなわたしをまじまじと見つめて微かに首を傾げてみせた。
 
「……なに企んでるんだよ?」
えっそんなの口には出せないよ乙女として
「申し訳ありませんがただいま当店はまだ準備中ですので生まれ変わったらまたご来店くださいませこの野郎。」

 にこやかな営業スマイルと共に言い捨てた瑛は、くるりとわたしに背を向けて珊瑚礁の中に戻っていく。

「ええっ珊瑚礁ブレンドは!?あ、わたし無一文だからもちろん瑛のおごりで!」
「もちろん却下だ。」
「え、じゃあ身体で払うから!!」
「俺様の腕はそんなに安くない。」
「わ、それヒドっ!瑛の鬼!悪魔!」
「俺が悪いのかよ!?……つーか俺、これから学校だし。」
「あ、そうか。じゃあわたし留守番してるね?」
「ああ、いい子にしてろよ……って、なにちゃっかり入り込んでるんだよ。」

 瑛の後を追いかけてさり気なく珊瑚礁に潜入したのに、瑛は途端に眉を寄せてドアを開け、わたしをつまみ出そうとする。

「えー?今いいって言ったじゃん!」
「いいとは言ってない。……うっかり人懐っこい犬かなんかと話してるつもりになってた。
 とにかく俺急ぐから。」
「しょうがないなぁ……じゃあまた出なおすよ。」

 渋々珊瑚礁から出たわたしが、ふと思いたってくるりと振り返ると、ドアを押さえたまま不審そうに見送っていた瑛がぎくりとする。
「……今度はなに」
「帰りついでにゴミ出して来てあげようか?あのゴミ箱でしょ?」
 たしか瑛はゴミを捨てに出てきたのだと思いだし、わたしはねずみ色の収集コンテナを指差して尋ねる。
 通学路だと思われる舗装された道路と少し離れてるから、面倒くさいんじゃないかと思ったんだ。

「……あ、でもこれ生ゴミだし」
 驚いたように少し目を丸くした瑛の手には、その辺においてあったらしいゴミ袋。
 わたしが差し出した手にうっかり渡しかけてあわてて引っ込めた。多分匂いとかを気にしたんだろう、恥じらうようなその態度に激萌え。
「大丈夫!喫茶店なんだし個別に業者さんに取りに来てもらってるんでしょ?
 昨日の生ゴミの匂いくらい、うちで待ってる生ゴミに比べりゃ可愛いもんよ。」
「………。」
「あ、なによその軽蔑したような目は?
 言っとくけどほんの一週間前のだから!仕事で帰れなくて出せなかっただけだからね!」
「朝からヤなこと言うなよ。想像しちゃっただろ……」
「あ」
 眉を寄せて苦い顔をする瑛に、遊くんの声が重なってはっとする。


『K−19ウイルスは傷心度が上がると活動しだすんだ。』


 リアル瑛にはしゃいじゃって忘れてたけど、この反応はまずいんだった。ただでさえさっきから失言を繰り返しているのに。
 

 とっさに眉を下げた上目遣いで瑛を見る。

「……ごめんね?」

 かくんと首を傾げてカワイイつもりで謝ると、瑛の頬が朱に染まった。
 うわ。大成功だ。

「……じゃ、悪いけど……お願い。」
「オッケーダーリン!!」
「だっ……誰がだよ!?」

『……ちょっとかわいかったから、許す。』
 は感情友好以上だから言ってもらえなかったけど、わたしなんかの百倍かわいくお願いされちゃったよ!

 結局わたしは好感度そっちのけな煩悩丸出しの返事を残し、ゴミ袋を片手にダッシュでゴミ捨てに向かったのでした。













☆☆☆ようやく核心部分に触れられましたでしょうか?
いやもうこの話は相当流れで書いてるので、どこ出してどこ出せてないかが行き当たりばったり……
なによりギャグのつもりが面白くない
とりあえず瑛が出てきたので満足です!
正確にはりあるさんはコ○ミさま社員ではなく、デバッグ請負会社の社員さんなんじゃなですかね?とかGS1プラスのエンドロール見て思ってます。
いろいろと適当にお願いします!☆☆☆

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