「なんでこうなるんだろう……。」
雪で防御壁を作りながら、ため息をつく玉緒先輩。
「こっちが聞きたい。手がしもやけにでもなったらどうしてくれるんだ。」
そして雪玉を丸めながらボヤく聖司先輩。
ルカとコウが発端とはいえ、最終的に二人を巻き込んだのは私。
罪悪感と責任感にかられた私は、二人を鼓舞するために二人の手を握って笑いかける。
「やるからには勝ちましょうね!」
目を丸くして私を見た先輩たちは、困ったように肩をすくめて顔を見合わせた。
「……仕方ないか。」
「……フン。」
二人の顔が赤い。どうやら先輩たちの闘争心にも火がついたみたい!
だけど、聖司先輩は幼なじみだからわかるとして、ルカやコウが玉緒先輩まで誘うなんて、ちょっと意外かも。
「僕は図書館に行く予定だったんだけど……」
聞いてみると、なんだか世の中の全てを悟ったような目をした玉緒先輩が、防御壁を作り終えて長身の身体を伸ばした。
「途中で設楽に捕まってね。」
……巻き添えなんだ。
「勿論、俺だってあいつらに付き合うほど暇じゃない。」
聖司先輩も、なんだか世の中の全てを諦めたような目で、作った雪玉を芸術的に積み上げながら口を開く。
「けど、あいつら……よりによって、俺の母親に取次ぎを頼むなんて姑息な真似を……!」
幼なじみとかご近所付き合いって大変なんだな……。
「あ、でもルカもコウも、二人に息抜きしてもらおうって気を遣ったとか……」
「「絶対にない。」」
「……そうですね。」
フォロー失敗。でも、たまにはみんなではしゃぐのも大事だよね!
「だけど、僕を巻き込む必要はないだろう?まったく設楽は……」
「文句を言うな。そのお陰で休日にコイツと会えたんだから、感謝されてもいいくらいだ。」
「……だったら、設楽も桜井兄弟に感謝できるか?」
「………。それとこれとは話が別だ。」
自分のペースで楽しもうって言ったけど、やっぱやるからには勝ちたいなぁ。