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□はば学冬の陣!
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「このくらいでいいかなあ。」

 雪玉を大量に作り置きして一息ついたところに、雪で防御壁を作っていたルカとコウが戻ってきた。


「お、いっぱいだ。頑張ったね、メモ子。」

「おお、こんだけありゃ充分だ。上出来、上出来。」

「ありがと!ルカとコウの作った壁もすごいね。」

 雪合戦のためと言うより、すでに雪祭りレベルのテンションで作ってたもんな……。

 二人の作り上げた防御壁はかなりの鉄壁具合。




「さーて、どうする?コウ。」

「そうだな……とりあえず、相手になりそうなのは柔道部の方か。」

 あ、作戦会議!

 私もあわてて居住まいを正し、二人に向き直る。


「嵐さんとニーナは体力もあるし運動神経もいいもんね。強敵だよ!」

「……だな。まずはそっちを全力で潰すか。」

 つ、潰すって……!

「で、でも先輩たちもコンビネーションはいいもんね。特に玉緒先輩の頭脳プレイは手ごわいかも!」

「……そっか。んじゃ会長から殺っとく?」

 や……殺るって!

「メンドクセー……まとめて逝っとくか。」

「ま、セイちゃんはいつでも消せるしね。」

「なんかいちいち表現が不穏なんだけど!」

 二人からたちのぼる黒いオーラを感じて思わず突っ込むと、二人がうって変わった優しい微笑みで私を見た。




「ってことで、オマエはいい子で留守番してて?」

「だな。旗の守り、頼むわ。」

「うん!」

 なんか二人が怖いから、その方がいい。私、いい子にしてるからね!








 ……とはいえ、一人で旗を守るのはちょっと不安かも。

 旗を取られても即負け!ってわけじゃないけど、勝敗に関わるのは確かだ。

 私の表情が曇ったのに気付いたんだろう。ルカとコウが顔を見合わせる。

「あ……」


「大丈夫だよ。」

 あわてて取り繕おうと私が口を開くより先に、ルカの優しい声。


「誰か攻めてきたら、呼んで?すぐ助けに来るから。」

 ルカが手袋を外して、私の前に小指を差し出して、約束、と私の小指に絡める。

 じわりと伝わる温もりが、心に募った不安を溶かして。




「ほら、コレ持ってろ。」

 少し照れくさそうにコウが手を差し出してくる。

「お守りだ。いざって時はコイツを思いっきりぶつけてやれ!」

 いや……お守りってコレ、ガッチガチに握った雪玉なんですけど。つか氷玉?

「……ええと、最善を尽くします。」


「おお、オマエならできる。」

 や……コレは投げちゃいけないと思う。人として。

 文句を言おうと見上げたのに、そこにあるコウの瞳が私を元気付けるみたいに優しいから。


「……頑張るね!」

 さっきまでの不安なんて嘘みたいに吹き飛んで、私は満面の笑みで二人を送り出した。












 間もなく始まった、激しい雪合戦。

 開始の合図と共に陣を飛び出したルカとコウは、同じように飛び出してきた嵐さんとニーナと戦闘に入った。

 どうやら先輩二人はしばらく様子を見るらしく、陣に動きはない。




 目で追うのがやっとな勢いで飛び交う、雪玉のラリー。

 雪合戦ってあんなに至近距離でやるものだったっけな。

 ……やっぱ残ってよかった。


 ほっと息を吐いた時、視界の隅でなにかが動いた。


「……っ!?」

「おい、気付かれたぞ!」

 慌てて目を向けた先から聖司先輩の声。

 しまった、油断してた!


「彼らが気付いて戻って来たら面倒だ。設楽、いいから先に!」

 玉緒先輩の冷静な指示が飛んで、続いて防御壁の向こうから先輩たちが姿を見せた。


「いつの間に……!」

 慌てて雪玉を手に臨戦体勢に入るものの、撃退するには距離が近すぎる。おまけに2対1だ。


「メモ子さん、出来れば抵抗しないでくれないかな。」

 困ったような笑顔で、玉緒先輩が優しく諌めてくる。


「そうだ。大人しく旗を渡せば悪いようにはしないぞ。」

 そして聖司先輩の、思わず揺らいでしまいそうになるほど綺麗な微笑。




 だけど、ルカとコウを裏切るようなこと、できるわけがない!















 助けを呼ぶ!




 最善を尽くす!





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