そう…守らなきゃ。
「私、聖司先輩のこと守ってみせます!」
「は?」
拳を握って力強く宣言すると、聖司先輩が驚いたように目を丸くした。
元々先輩たちを誘ったのはルカたちだけど、帰ろうとした先輩たちを引きとめたのは私。
玉緒先輩は風邪ひいてもいいけど、聖司先輩の指がしもやけになったら大変だ!
「いや、僕も受験生だから風邪ひくのは困るんだけど。」
よって、この身を盾にしても、聖司先輩だけは私が守る!
「ああ聞いてないよね。大丈夫、わかってる。」
「だって雪玉って言っても、投げるのがあの4人ですよ?
当たったらゼッタイ痛いし……聖司先輩をそんな目に合わせるわけにはいかないです。」
あの4人の『マジ勝負』……。想像しただけでも身震いがする。
ほら、聖司先輩の綺麗な顔にもものすごい眉間の皺が刻まれてる。
「メモ子、おまえ……」
「私のことなら心配いりません!例えこの身が砕け散ろうとも!」
「つまりおまえは、俺が女を盾にしなけりゃならないような、情けない男だと思ってるんだな?」
「そんなの気にする事ないですよ!人には向き不向きがありますし。」
「……なるほどな。」
……あれ?聖司先輩の声、すっごい不機嫌だ。
不思議に思って先輩を見ると、その顔にもくっきりと不機嫌な表情が。
……えっと。
「や、聖司先輩は情けなくなんかないですよ?」
「今更気を遣っても遅い。……おまえらはそこで見てろ。」
「え」
「設楽?」
訝る私と玉緒先輩をよそに、聖司先輩は積み上げた雪玉の山から雪玉を掴むと、敵陣に向かって歩き出した。
「ま、待ってください先輩!どうするつもりですか!?」
「おまえの助けは必要ない。」
慌てて追いかけると、とんでもなく機嫌の悪い声で制されて。
反射的にぎくりとして、足を止める。
「待て、設楽!落ち着くんだ!」
「一人で行くなんて無謀です!相手はあの4人ですよ!?」
「ウルサイ。そこまで見くびられて黙ってられるか!」
玉緒先輩が説得しようとしても、取り付くしまもない。
聖司先輩がすぐ怒るのはいつもだけど、これはなんだかいつもと違って根が深い。
それも、私が怒らせてしまったのは間違いなく。
オロオロと状況を見守るしかない私がなにも出来ないうちに、
臨戦体勢に入った聖司先輩は前線に向かってどんどん進んで行く。
「ど、どうしましょう……」
「あれはもう、止められそうにないな。」
深いため息と共に玉緒先輩が肩をすくめて、私は完全に途方にくれた。
聖司先輩一人で、ルカやコウに敵うはずなんてないのに……。
「仕方ない。これは遊びなんだし、設楽の気の済むようにさせればいいさ。」
「でも、怪我でもしたら……」
「それは設楽の力不足なんだから、##NAME##さんが気にする事はないよ。」
「そんな……」
玉緒先輩の言うことは、冷たいようだけど間違ってはない。
けど、私が怒らせたせいで、聖司先輩が怪我するかもしれないなんて……
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