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□『卒業記念SS』3部作 全10話
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並木道
桜の盛りはまだもう少し先で、今はまだたくさんの蕾がぎゅっと頑なに身を縮めている。
まだ時期の早い桜並木は閑散としていて、いつかの人出が嘘のように寂しい。
『この桜はさ』
『俺達が卒業する春も、きっとこうして咲いてるんだろうな。』
その言葉に当たり前だよって笑って
笑ったのに、涙がこぼれた。
『これから二人がどうなるかなんて、誰にもわからないけど、でも、いつか』
「いつかっていつ?」
卒業式には間に合わなかったけど、もうすぐ桜は咲く。
それをわたしは一人で見るんだ。
約束の桜
いつかとお化けは絶対に来ないって、誰かが言ってた。
『いつかまた、一緒に見ような?』
「……嘘つき」
桜だけじゃない。また行きたいところもまだ行ってないところも、まだ言ってないことだっていっぱいあるのに。
ほんとはピュア系の服よりスポーティな方が好きだとか
平気なフリしてたけど瑛くんと並んで歩くのはついてくのが大変だとか
ジェットコースターは苦手だとか、観覧車で膝と膝がぶつかるのがいつもすごく恥ずかしかったこととか
ホントはホラー映画は大好きだとか、瑛くんと卓球の真剣勝負なんて二度とやらないって決めたこととか
瑛くんがいなくて寂しくて、瑛くんに触れたくて、チョップでも何でもいいから瑛くんの感触が欲しいって思うくらい
会いたいって。今すぐ会いたいよって叫びだしたいくらい
きっと一生瑛くんしか好きになれないくらい
「好き……」
その言葉を伝える勇気さえあれば、想いはいつでも届くって思ってた
なにもかももう、届かない。
※[いつかとお化けは来ないもの]BY姫条まどか ドラマCDより