ときめきバグりある!1st trip

□7・あんまり巧いとどっちがモノマネされてる方かわからなくなる。
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「ちょ、ちょっと待ってよおねえちゃん!」
 後ろからあわてて追いかけてくる、可愛い遊くんの声には後ろ髪を引かれるけど
「それがユーザーの希望なら仕方ないよ……。所詮ユーザーあってのゲームだし。」
「それでもクリエイター!?」
「どわっ!」
 ほとんどタックルで縋りつかれ、わたしは遊くんもろとも地面に倒れる。

「むしろその世界観も貫けないゲームなんて、妄想にも値しないクソゲーに成り下がっちゃうよ!!」
「む!聞き捨てならない単語!クソゲーじゃないもん!名作中の名作だよっ!!」
「だったら尚更そこは守らなきゃならないんじゃないの!?」

 むぅ。きりりと目を吊り上げて怒る遊くんは思いのほか迫力がある。言ってることも正しいし。
 わたしは大きなため息をついて肩を落とす。
「みんなの妄想力が鬼畜……K−19ウイルスとして、志波くんや真咲先輩のキャラを書き変えてる。
 その影響で今わたしがこの世界にいるのだとしても、それは一体何のため?ただの巻き添え?
 一体わたしに何をしろって言うの?」
「……ごめん。おねえちゃんがこの世界にいる理由や原因について、俺が知っていることはないんだ。」
 遊くんは肩をすくめて悪びれもせずに言う。
 でもまあそりゃそうだ。わたしがゲームの世界にいることは、理屈でなんて説明できない現象なんだから。  
 ……つまり、元の世界に帰れるのかも、この世界にいつまでいれるかもわからない……ってことだ。

「でも、現におねえちゃんはここにいる。」

 まっすぐな視線に捉えられて、わたしはぎくりとする。確かにそれが今ある現実。

「いるはずのないりあるおねえちゃんが現れて、いなくてはならないおねえちゃんがいなくなった。」
「デイジーが!?」
 驚いて聞き返すと、硬い表情でこくりと頷かれる。
 大変どころの話じゃない、主人公不在の恋愛SMGってなんだ!?美少年観察ゲーム!?

 ……結構いいかもな。
 じゃなくて!!


「おねえちゃんが鍵なんだ、きっと。」
 パニクるわたしに遊くんの静かな呟き。
「鍵……?」
「お願い。」

 まっすぐな瞳

「俺たちを守って……りあるおねえちゃん。」


 その瞳が湛えた想いに、多分すでに出ていた答えが胸にぐっと押し寄せてくる。

「……もちろんだよ、遊くん。」
「おねえちゃん!」
 ぱあっと顔を輝かせた遊くんに、わたしはにっこりと満面の笑みで応える。




「わたしだって、この世界やみんなが大好きなんだよ!」




 
 
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