ときめきバグりある!1st trip

□6・結局最後は心の目!
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「あんたなんて志波 勝己じゃない!!」


 思いっきり叫んだ後、絶望にも似た気持ちのままにぎゅっと目を閉じた。
 これは八つ当たりだ。
 そんな志波じゃない志波を目の当たりにする羽目になったのは、わたしの軽率さが招いたことなのに。


「そうだよ。」
「!?」

 思いがけない声に驚いて目を開ける。
 初めに映ったのはわたしの上に覆いかぶさったまま、動きを止めてる志波の姿。

「志波……くん?」
「大丈夫、フリーズしてる。」

 まったく違う方向から聞こえるさっきの声に、わたしはあわてて押さえ込まれて動けない身体を捻った。



「遊くん……!?」
「危ないとこだったね、おねえちゃん。」

 玄関のドアを開けた体勢のままピクリともしない真咲先輩の横から、のぞきこむようにしてこっちを見ているくりっとした瞳の可愛い男の子。
 デイジーのお隣さんの音成 遊くんだ。

「早くそこから抜け出しなよ。あと、おっぱい見えてる。」
「子供は見なくていい!!」
 あっけらかんと言ってのける遊くんに、私の方があわててしまう。
 そして遊くんの助言どおり、急いで志波くんの下から抜け出し乱れた服を整える。

「ええと……」
 一息ついて、ゆっくり辺りを見回す。
 完全に動きを止めたままの志波くんと真咲先輩。
 すべての音を失った世界。
 訳知り顔でこっちを見てる遊くんの、さっきの言葉。

「フリーズ……」
「けど、しばらくすれば動き出すはずだから場所を変えようよ。そこで話すから。」
「話すって……遊くん、知ってるの?その……」
 この世界がゲームだってことを知らなかったら、フリーズなんて言葉は出てこないだろう。だけどやっぱり言葉にしては言い辛い。
「うん知ってる……というか、わかってる。だから気にしないでよ。」
 遊くんは無邪気に笑ってわたしを見る。


「俺はこの世界のナビゲーターなんだよ?」
「あ……」

 その一言で納得できた。
 遊くんは作品の中でゲームのシステムをデイジーに説明する存在なんだ。
 だからこの世界のことも、今起きてることが設定外なことも理解してる。
 しげしげと遊くんを見つめると、遊くんは照れくさそうに眉を寄せ、「早く行くよ!」とわたしを急かした。

 部屋を出るとき、ドアの前を塞いでいた真咲先輩の横を通ろうとして、固まったままの先輩を思いっきり倒してしまったけど、大丈夫かな?

 ……まあそれも乙女の危機を見捨てた代償としては、軽すぎるくらいだと思うけど?
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