ときめきバグりある!1st trip

□5・絶対白いトコしか踏まないポリシー!!
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「ぷはぁ〜!」

 何ヶ月ぶりってなぐらい久しぶりの風呂上がりのビールに、乙女としてどうだろうかってくらいに満足して息をつく。

「……オヤジ。」
「だって美味しいんだも〜ん。」

 仏頂面でぼそっとつぶやいた健全な高校生に、勝手に緩む顔を向けて笑う。

 だって真咲ハウスに志波くんとお泊まりって!どんだけ萌え萌えなシチュエーションなのよ!

 そりゃ普通なら、初対面の男2人と夜と共にするなんて、恐ろしい事出来ないけど。
 でも相手は好きでも大切にしすぎて手を出せない真咲と、好きな女以外とはやらないシバカツ。
 意志の堅さは折り紙付きだよね?

 まあ来たなら来たでむしろならどうぞ的な(ヤバイ鼻血出そう!!)


「じゃ、早速コレからいくぞー」
 缶ビールを抱え込んで悶悶と思考に耽る私をよそに、真咲先輩は楽しみでしょうがないと言わんばかりの表情で、1枚目のDVDをセットする。

 ゆったりめのソファにあぐらをかいて、不機嫌そうに自分の膝に頬杖をつく、すっかり口数の減ったお年頃な志波くんをちらりと見て、
さすがに隣に座ったら怒られそうだと判断した私は、ソファと小さなテーブルの間の床に腰を落ち着ける。

 真咲先輩に借りた部屋着は相当ぶかぶかで、いっそお約束で上だけ着ようかと思ったんだけど

「思った以上に怖いんだよ……」
 志波くんのあの不機嫌な目で睨まれて、しっかりズボンを渡された。
 けどかなりぎゅうっと紐を結んだにもかかわらず、膝まである上着の中で今にもずり落ちそうなこのわずらわしさ……

「ん?りある、ホラー苦手か?」
 思わず眉を寄せると、さっきの言葉を聞いてたらしい真咲先輩が、テーブルを挟んだ向かいに座りながら、かくんと首を傾けて気遣うように聞いて来た。

「大丈夫ですよ〜むしろ好物です。」
 いやいやその身体の大きさとのギャップがたまらん可愛すぎる仕草はもっと大好物ですが!

「ならいいけど。ダメだったら無理せず言えな?これ相当際どいから。」
 そう言ってテレビに向き直った先輩の目はらんらんと輝いていて、相当嬉しそうだ。
 確か真咲先輩はホラーとか見てるときは、周りの声が耳に入らないくらい没頭しちゃうんだっけ。
 だったらますます安全パイだ。

 ……ちょっと残念な気がしないでもないけどね。












 いや、好きですよ?ホラー映画。
 ときどきゾンビとか撃ちまくる系のゲームのテストも頼まれるし、内臓ぐっちゃり系のスプラッタも、むしろ細部のクオリティが気になって見入っちゃうくらいは大丈夫で。
 そしてそういう映画に良くあるねっとりとしたベッドシーンも、ああコイツら死ぬんだなぁとか、お約束の展開を思えば儚げでもあるわけで。

 ……でもさぁ
 
 画面では男の腹を突き破って出てきた無数の触手(血まみれな内臓まみれ)が、女の口からめいっぱい侵入して内臓をかき混ぜている。
 これはホラーとかスプラッタと言うよりは、ほとんどスカトロに近くないですか先輩?

 ……あ、下から出てきた。
 さすがにコレを女の子に見せるのはどうかと思うし、デイジーだったら確実に爆弾爆発だってば……とグチりながら横目で先輩を見ると、エロではない意味で画面を食い入るように見つめる真剣な眼差し。

 ……ああ、無駄にカッコイイけどさすがにヒク。

 ため息をつきながらソファによりかかって天井に目を向けると、さっきの体勢のままの志波くんが視界に映った。
 少し長めの前髪が作り出す陰で、顔までは見えないけど、どうやら寝てるみたい。

 こんな窮屈な姿勢で眠らせてしまって悪いなぁ……。
 いくら運動タイプでも、毎日相当なトレーニングを自分に課してるんだから、かなり疲れてるだろうし。

 起こすのは忍びないけど、やっぱりちゃんとベッドで寝た方がいいよね。この様子じゃ真咲先輩はしばらく寝ないだろうし、わたしも適当なところで寝るのは慣れてるし。
 なにより側のテレビから凄まじい悲鳴が絶え間なく響く環境は、精神上よろしくないと思うんだ絶対。
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