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□背中合わせ
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チリン、チリン

軽やかな鈴の音がする。私は本を両手に抱えながら、喫茶店の中に入った。鈴の音は、入店を知らす入口のベル鈴である。

木の匂いがする店内に、軽やかな足取りで、いつもの席に着席する。持っていた本を、トン、と卓上に置くと私はメニューを見た。


『甘い、ものがいいな…』


ぽつりと呟く。

木製の壁と緑のソファに暫し凭れながらメニューを舐めるように見る。その際にカサカサと後頭部で緑の葉が揺れた。

不審に思い、背後の席を見てみると、そこには本を読む夜神君の姿があった。専ら見えたのは項と綺麗な琥珀色の髪だったが、私には直ぐに解った。


ああ、夜神君だって。


今日はいつもの奥の席ではないのだと、私は目を細めると背後の席から視線を外して自分の卓上に向けた。

そして、メニューを見てから私は店員を呼んだ。


『アイスキャラメルラテ、をお願いします。』


店員は笑顔で注文を復唱すると、会計の紙を卓上に置いてそそくさと立ち去っていった。

私は持ってきた本を読もうと手を伸ばすと、後ろから思ってもいない人の声がして指先を少し痙攣させた。


『今日はコーヒーじゃないのかい?』
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